基礎控除引き上げを 辰巳氏 暮らし置き去り追及
![]() (写真)質問する辰巳孝太郎議員=25日、衆院総務委 |
日本共産党の辰巳孝太郎議員は地方税法等改定案を審議した25日の衆院総務委員会で、個人住民税の給与所得控除は引き上げる一方、基礎控除を据え置き、暮らしを置き去りにしようとしていると告発し基礎控除引き上げを要求しました。
辰巳氏は「大前提として生計費非課税の原則を貫くことが重要だ」と強調。税を免除されている生活保護基準よりも税や社会保険料が引かれ可処分所得が下回るケースを示し、課税最低限を生活保護基準以上にするよう求めました。
改定案において個人住民税の基礎控除が据え置きになっていることは「年金所得者、個人事業主には恩恵がない。なぜ給与所得控除だけの引き上げなのか」と追及。「地方からも一定の評価をいただいた」と強弁した総務省の寺崎秀俊自治税務局長に対し、介護保険料、国民健康保険の医療費自己負担限度額など市民サービス利用料は、住民税納付額や課税か非課税かによって決められるため「住民税の影響が非常に大きい」と反論しました。
大阪府での事例では地域密着型特別養護老人ホームに入所している88歳の夫と84歳の妻の施設入所費用が夫婦合計で月18万円だったのが、今年度に年金の名目金額が月額にして3300円上がっただけで夫が住民税課税世帯になり、世帯全員非課税が条件の負担限度額認定証の発行がなくなったため夫婦合計で月42万円も請求されたと告発。「こんな理不尽なことはない。年金が上がっても基礎控除が上がれば非課税世帯のままで利用料は上がらない」と批判し、基礎控除引き上げで全体の課税最低限のラインを引き上げるよう求めました。
2025年2月26日(水)付「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
光熱費の高騰、円安の影響による物価高など、国民の暮らしはますます苦しくなっています。エンゲル係数が四十三年ぶりの高水準になったと報道もされておりました。
総務省の家計調査でも、二〇二四年の世帯当たりの消費支出の内訳の品目分類を見ますと、いわゆる物価の影響を除いた実質というのがあるんですけれども、実質では、生鮮野菜は一一・五%のマイナス、果物は七・九%のマイナス、つまり買い控えているわけですね。スーパーに行っても本当に高いのでそういったものに手が伸びない、野菜や果物が食べられないということであります。こうなると、栄養面でも非常に心配になってくるわけなんですけれども。
さて、この間、何万円の壁という議論がされてきているわけなんですね。これは所得税及び住民税の非課税限度額を引き上げるというものであります。私たちは引上げそのものにもちろん賛成するものなんですが、ただ、今回、所得税でいうと百三万から百二十三万円。こうなりますと、年収二百万円の方で五千円ほどの減税にしかならないということであります。
私は、今日委員の皆さんからも生活がこれだけ苦しいとか物価高だという話がるるあるわけなんですけれども、これだけ苦しいときにはやはり消費税の減税こそ最も効果的な対策ではないかと。
総選挙でも、消費税の減税と掲げていた政党もたくさんあったわけですよ。途端に、選挙が終わったら言わなくなったというふうにも思うんですけれども。ただ、この何万円の壁ということをあえて議論するならば、やはり引上げの根拠ですね。物価高に応じてとか最低賃金が上がっているとかいろいろ出てくるわけなんですけれども、私は大前提として、生活費には税金をかけない、いわゆる生計費非課税の原則というやつですね、ここに基づくことが大事ではないかというふうに考えております。
今日は財務省にも来ていただいているんですけれども、今回、基礎控除を上げるには上げるんですけれども、基礎控除の引上げはやはり最低生活を保障する水準まで引き上げることが必要だと思いますけれども、いかがですか。
○大臣政務官(東国幹君) 基礎控除等から成る所得税の課税最低限については、生計費の観点や、公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性などを踏まえて、総合的に検討をされてきたところであります。
このうち、生計費の観点については、昭和三十年代後半から四十年代前半においては、委員御指摘のとおり、マーケットバスケット方式により物価を勘案し、近年は、消費者物価の総合指数が勘案されて基礎控除等の額が引き上げられてきたところでありまして、今般の基礎控除等の引上げ幅に関しましては、消費者物価指数が最後に基礎控除を引き上げた平成七年以降一〇%程度上昇し、今後も一定の上昇が見込まれるところであります。また、生活必需品を多く含む基礎的支出項目の消費者物価が二〇%程度上昇していることを勘案すれば、生活実感も踏まえた調整になっているものと考えているところでございます。
その上で、更なる引上げについては、昨年十二月二十日、自民党、公明党、国民民主党の三党の幹事長間で、十二月十一日に合意した内容について、引き続き関係者間で誠実に協議を進めることが確認されているものと承知しているところでございます。
以上でございます。
○辰巳委員 今答弁がありましたとおり、かつての大蔵省は、マーケットバスケット方式といいまして、いわゆる生計費非課税の原則に一応準じて、それを大前提に非課税のラインというのを決めていたことがあったということなんですね。今は、いろいろそれも含めて総合的にという答弁だったと思うんですね。アメリカあるいはドイツも、実はこの生計費非課税の原則というものを取って非課税ラインというのを決めております。
今紹介がありました、昭和四十年代初めまでそういう立場で大蔵省はやっていたということなんですが、今日資料におつけいたしましたのが、一九六五年、今からちょうど六十年前ということになりますね、二月二十五日付の読売新聞の資料なんですけれども、これは所得税のかからぬ最低のお献立として大蔵省が発表したものであります。当時の報道では、国立栄養研究所に依頼して最も質素で最近の食生活の実態に合った献立を作ってもらい、その食費から世帯の規模に応じた生計費をはじき出し、四十年度税制改正案による所得税の課税最低限と比較したものとしているんですね。
見ていただくと、例えば春のメニュー、一番上の方は春のメニューなんですけれども、朝、御飯、大根のみそ汁、ウズラ煮豆、たくあん。昼、御飯、イカの刺身、里芋とイカの煮つけ、さつま揚げと菜っぱのすまし汁、京菜、これは水菜の塩漬けということになっていますね。あるいは、冬のメニューで夜というのがありますけれども、ギョーザ、野菜炒め、はんぺんのすまし汁、たくあん。野菜を結構取っているんですよね、この当時、昭和四十年。
大臣、昭和四十年の大蔵省の献立なんですけれども、これを改めて見ていただいて、何か感じるものはありますか。
○国務大臣(村上誠一郎君) 昭和四十年で、今から六十年前で、伯父の村上孝太郎が大蔵省に在籍した当時で、この献立を見て非常に懐かしく思いました。
○辰巳委員 当時の大蔵省も生計費非課税の原則を基にこういう献立を考えていたということです。もちろん、当時の国民は、これできちんと栄養が取れるかとか、これはあくまで食費だけであって、生活するためにはもっと必要じゃないかとか、いろいろな批判はあったんですけれども、当時としては少なくとも最低限の食費には税金はかけないという考えには立っていたということなんですよね。
非課税限度額というのを幾らの水準で考えるべきなのかということなんですが、私はやはり指標として考えるべきなのが生活保護基準だと思うんですね。厚労省に確認しますけれども、そもそも生活保護費は税金が免除されております。その理由はどういったものでしょうか。
○政府参考人(岡本利久君) お答え申し上げます。
生活保護制度におきましては、資産、能力その他あらゆるものを最低限度の生活の維持のために活用することが受給の要件とされており、保護費につきましては、厚生労働大臣が定める基準により算定される最低生活費のうち、その者の金銭で満たすことができない不足分を補う程度において支給するものでございます。
この保護費につきましては、生活保護法第五十七条の規定により、租税その他の公課が課されないこととされております。これにつきましては、仮に保護費へ課税がなされた場合、受給者が最低生活費を割り込む生活を余儀なくされ、法の目的が達成されないため、受給者の権利を保障する趣旨であるというふうに承知しております。
○辰巳委員 公租公課の禁止なんですね。もし生活保護費に税金などをかけてしまうと、憲法二十五条に根差した最低限度の生活というものが困難になるので生活保護費には税金をかけない、こういう理屈になっているわけなんです。これは非常に明確だと思うんですよ。暮らしていく最低限度の所得に税金はかけないということなんですね。人間らしい暮らしのために、衣食住がもちろん充足しているだけではなくて、健康で文化的な活動に要する費用ももちろん考慮されるべきだというふうに思うんですね。
そこで、生活保護基準といわゆる非課税限度額との比較を考えたいと思うんですよ。
生活保護費は、いわゆる可処分所得ということになります。手取りですよね。税金も引かれませんし、基本的には社会保険料というのも免除されますので、入ってきたお金というのは使えるお金ですから、可処分所得、手取りということになります。では、生活保護を受給されている夫婦、これは四十歳未満の夫婦と子供一人の三人世帯で、生活保護基準は幾らになるか。大阪市の場合でいいますと月額二十一万五千九十円、これが可処分所得としての生活保護費なんですよね。
では、同額の可処分所得、手取りを受け取るためには一般的な給与収入で額面で幾らになるかといいますと、月額で、額面ですよ、二十六万円ぐらいになるんですね。年収でいったら、大体三百万円を超えるぐらいの年収なんですよ。そこで初めて手取りとして、可処分所得として生活保護基準と大体同等になるということなんですね。これくらいの年収の方というのは、もちろん厚生年金保険料もかかりますし、健康保険料あるいは雇用保険料、所得税がかかりますね、住民税は次年度からもかかっていくということになるわけですね。
改めて財務省に聞きますけれども、生活保護基準の所得であるにもかかわらずこれだけの税負担、最低限度の生活需要を満たせないんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
○大臣政務官(東国幹君) 所得税の課税最低限は、生計費だけではなく公的サービスを賄う費用を広く分かち合う必要性も含めて、総合的に検討して定められているものと承知をしております。一方、生活保護制度は、憲法二十五条の理念に基づき、生活困窮者に対し必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とするものであります。
こうした観点から、例えば保有資産については、課税最低限は保有状況を考慮せず適用されている一方、生活保護制度は、その目的に鑑み、資産、能力その他あらゆるものを最低限度の生活の維持のために活用することが受給の要件とされております。
また、地域差についても、課税最低限は全国一律に定められている一方、生活保護制度は所在地域等に応じて必要な事情を考慮して基準が設定されております。
このように、両者はその趣旨、目的、仕組みが大きく異なるものであるため、生活保護費と課税最低限の額を単純に比較することは適切ではないものと考えております。
以上です。
○辰巳委員 税金をどこから取っていくのか、どういう公平な税制が大事なのか、もちろんそれはあるんですね。だけれども、最低生活費と非課税基準に乖離があると、やはり制度そのもの全体にとって矛盾が出てくるというふうに思うんですよね。
個人住民税についてもやはり議論をしたいと思うんですね。今回、個人住民税は非課税限度額も設定されています。所得税は二十万円引き上げるということなんですけれども、住民税は今回、給与所得控除の引上げということにとどまっております。これでは、年金所得者や個人事業主、これは基礎控除が上がりませんので、恩恵はありません。なぜ給与所得控除だけの引上げになったのか、お答えいただけますか、大臣。
○政府参考人(寺崎秀俊君) お答え申し上げます。
個人住民税におきましては、地域社会の会費的な性格や地方税財源への影響等を総合的に勘案し、今回、基礎控除額を据え置くこととしております。
今般の対応につきましては、地方からも一定の評価をいただいたものと考えているところでございます。
なお、給与所得控除については、十万円の引上げの効果が住民税にも適用になるものでございます。
○辰巳委員 ですから、基礎控除が引き上がっていませんので、基礎控除が引き上がっていないと、個人事業主あるいは年金所得者は全く恩恵がないということなんですよね。
いろいろ財政事情をという話をやはりされるんですけれども、政府全体の今年度の予算の中身を見ても、社会保障費や文教科学、中小企業対策費などのいわゆる暮らしの予算というのは物価の上昇に追いつかない、実質マイナスになっているわけですね。ところが、防衛関係費だけは前年比九・五%の伸び率で突出をしているわけなんですよね。財源ということでいうのならば、ここにメスを入れる必要があるというふうに私は思います。防衛関係費というと思考停止になってしまうのが、残念ながら今の政府の立場かなというふうに思います。
住民税について、私は非常に、所得税よりももっと住民サービスの関連において着目すべきではないかなというふうに思っているんです。私は、この二十年で生活相談を八千件やってきました。住民サービスの関係において、実は非課税限度額は所得税よりも住民税の方が着目すべきものであるということを実感しております。なぜならば、住民サービス利用料などは住民税の額あるいは非課税か課税かで決められることが多いからであります。
介護保険料、国民健康保険の医療費の自己負担限度額、今、国会でも議論されています、後期高齢者の医療の自己負担限度額、障害者の福祉サービス、高等教育の修学支援制度等々、各自治体で実施しているこういう市民サービスというのは、課税か非課税か、課税がどれぐらいされているのか、ここがむちゃくちゃ大きいわけですね。
大阪で実際に起こったことを紹介したいと思います。我が党の豊中市会議員のところに来た相談なんですね。
八十八歳の夫、八十四歳の妻、御夫婦で特別養護老人ホームに入所されております。年金は、夫が月十五万円、妻が三万円、合わせて十八万円の世帯の年金です。補足給付、高額介護サービス費の限度額などが適用されまして、介護サービスや食費、部屋代を含めた施設の入所費用は、夫が十二万円、妻が六万円、合わせて十八万円。つまり、このお二人の年金額と同額の特別養護老人ホームのサービス料。同額なんですね。
ところが、今年度から夫が住民税の課税世帯になりました。つまり、世帯全員が非課税が条件の負担限度額の認定証の発行がありました。そうしますと、夫、妻共に請求が、一人ですよ、月二十万八千円来たんです。合わせて四十二万円来たんですね。施設に相談するも、市役所に相談するも、どうにもならない。何とか特例減額を受けることができて、夫婦それぞれの負担が十三万円、合わせて二十六万円。年金を合わせて月十八万円ですから、残りは離れて暮らす子供さんが負担をしなければならなくなったということなんですね。
何でこんなことが起きたのか。年金の名目金額が上がったからなんですね。どれぐらい上がったか。夫は年間四万円、つまり月にして三千三百円の年金の引上げで非課税から課税になって、二人の利用料に甚大な影響が出たわけであります。これだけの急激な値上がりにも激変緩和というのはありません。このケースでも、年金が上がっても基礎控除も上がれば、もし上がっていれば非課税世帯のままということになる、利用料は上がらないということも考えられます。控除という名前は一緒ですけれども、基礎控除を上げるのか、それ以外で上げるのか、これで全然違うわけなんです。今回、年金所得者ですから恩恵がないわけです。
大臣、こんな理不尽なことはないと思うんですけれども、今のケースを聞いてどう思いますか。
○政府参考人(寺崎秀俊君) お答え申し上げます。
年金所得者につきましては、受給者が経済的稼得力が通常減衰する局面にあるということで、高齢者である理由に基づきまして公的年金等控除が設けられております。この公的年金等控除の最低保障額は給与所得控除の最低保障額と比べて高い水準となっておりまして、具体的には、公的年金控除の最低保障額が百十万円、給与所得控除の最低保障額が六十五万円となっているところでございます。
委員御指摘のとおり、個人住民税額を参照している各種制度は多々ございます。これらの給付や負担の決定水準の在り方につきましては、所管省庁において検討し、その結果を踏まえ必要な対応を行うとされたものと承知しております。
○辰巳委員 ひどい答弁だと思うんですよね。年金控除は給与所得控除よりも高い、当たり前じゃないですか。何で高くそもそも設定されているのか。今回はそれを据え置いているわけですよね。ですから、あくまで基礎控除を引き上げて、全体の非課税の限度額、このラインというのを引き上げていくということを私は求めていきたいというふうに思います。
質問を終わります。