日本共産党 衆院比例 近畿ブロック たつみコータロー

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国会会議録

TSMC誘致で水枯渇の危機 国が将来予測示せ

 

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(写真)質問する辰巳孝太郎議員=2月28日、衆院予算委分科会

日本共産党の辰巳孝太郎議員は2月28日の衆院予算委員会分科会で、経済産業省が最大1兆2080億円の補助金投入を決定している台湾の半導体受託生産企業TSMCの熊本県菊陽町への進出で地下水が危機に直面している問題をただしました。

半導体製造には大量の水が必要で、同社は熊本の約100万人の水道水源をまかなっている地下水から、第1・第2工場合計で年間803万トンを使用すると表明しています。多数の関連企業も進出し取水量が増える一方で、工業団地造成や道路拡張等の影響もあり、地下水を守るために水を張り染み込ませる「人工かん養」を行ってきた水田が急速に減少しており、県民は地下水枯渇への懸念を強めています。

辰巳氏は、経産省が巨額の補助金と熊本の地下水を材料にTSMCを誘致したと批判し「地下水の将来予測を国の責任で示すべきだ」と要求。武藤容治経産相は「地下水保全について地元住民に丁寧に説明するように(同社を)指導している」などと弁解し、国の責任には言及しませんでした。

辰巳氏は「(同社は)問い合わせ先さえホームページになく、地元の声を聞く姿勢がない。熊本の『いのちの水』の地下水はどうなっても知らないという姿勢は許されない」と厳しく批判しました。

PFAS規制反対を扇動 辰巳氏が経産省批判

日本共産党の辰巳孝太郎議員は2月28日の衆院予算委員会分科会で、発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS)の広範囲な汚染が明らかになった欧州連合(EU)の化学品庁が2023年に規制強化案を公表し意見公募(パブリックコメント)を行った際、日本の経済産業省が旗振り役となり多数の日本企業が規制強化反対の意見を提出した問題を厳しく批判しました。

同庁に届いた意見5642件のうち約2割の938件が日本企業のもので、いずれも反対意見でした。PFASを製造・販売している企業などによる協議会が23年3月に開催したオンライン会議で意見の提出を呼びかけた後に急増していました。

辰巳氏は、経産省が同会議への参加を業界団体に促し、同省素材産業課長自身がパブコメに意見を送っていたと告発し、「経産省全体が乗り込んで規制強化反対の旗を振ってきたということだ」と指摘。同省の野原諭商務情報政策局長は、当時の西村康稔経産相の了解を得て意見を提出したと明かしました。

辰巳氏は「経産省ぐるみだ」「多数の企業に働きかけて反対のパブコメを殺到させるなど、内政干渉と言われても仕方ない」と批判。武藤容治経産相は「産業界に理解してもらうコミットは必要だ」などと開き直りました。

辰巳氏は「環境や人命、健康よりも経済が優先されたのが水俣病の教訓だ」と指摘。日本企業がPFAS不使用の感光剤を開発したと紹介し、「命と健康を守ることを最優先にすることなしに経済成長もイノベーションもない」と主張しました。

2025年3月3日付「しんぶん赤旗」より引用

議事録を読む

○辰巳分科員 日本共産党の辰巳孝太郎です。
前回二月十四日は、政府の半導体政策がアメリカの軍需に応える形で進められてきた問題を取り上げました。今日は、半導体製造の過程で欠かせない水の問題について取り上げます。
半導体製造の三割が洗浄工程であり、大量の水が必要であります。政府が巨額の補助金で熊本に誘致したのが台湾の半導体受託生産企業、TSMCであります。昨年の売上げは十三兆七千六百億円、最終利益は五兆五千八百億円の巨大企業であります。政府からすれば誘致した半導体企業でありますけれども、TSMCの狙いは、熊本の水、つまり地下水ではないか。当然のことながら、その狙いに対する地元の懸念が高まっております。
経産省に確認しますけれども、一・二兆円の補助金に加えて、熊本の地下水の存在がTSMCが熊本進出を決めた要因ということで間違いありませんね。
○政府参考人(野原諭君) TSMCが日本進出に当たって、製造拠点の立地先については、顧客のニーズ、インフラの整備状況、周辺に存在する関連のサプライチェーン、優秀な人材の確保のしやすさなど、様々な検討要素を総合的に判断し、熊本県に進出先を決定されたものと承知しております。その中で、地下水を始めとした豊富な水資源があったことも立地を決定した要因の一つであったろうというふうに聞いております。
○辰巳分科員 そうですよね。二〇二三年六月二十二日の民間企業のインタビューに対しても、経産省の当時の大臣官房参事官は、TSMC側からすると、台湾の中は水の問題があるんだ、補助金の金額だけではないんだ、水の供給不安とかも考慮されていると語っております。
改めてもう一回聞きますけれども、台湾の水の供給不足、あるいは汚染の問題、こういう問題があったということですか。
○政府参考人(野原諭君) 台湾の国内にたくさん工場を建ててきたことによって、台湾でどんどん製造拠点を増やしていくことについて幾つか律速になっていることはあると思っています。水の供給だけではなくて、電力供給の問題、人材のプールの問題、いろいろ課題がございます。地政学的なリスクもありますから、供給拠点をそれぞれ需要があるところに分散したいという点もあると思われますけれども、そのような複数の要因の中の一つとして水の供給の問題についてもあるんだろうと考えます。
○辰巳分科員 至れり尽くせりの巨額補助金と熊本の地下水を交渉材料にして政府が国策としてTSMCを誘致したということではないかと思うんです。
この熊本の地下水は、熊本市など、市町村百万人の水道を賄う、地元が世界に誇る命の水であります。土木の天才と言われた加藤清正が、白川から農業用水を引くための堰や用水路を数多く整備しました。阿蘇の噴火、火山活動でできた水を通しやすい性質の水田から大量の水が地下水に浸透、良質の地下水を育んでまいりました。
今もなお熊本市民の水道水源は一〇〇%地下水で賄われており、熊本市のウェブサイトでは、ミネラル成分がバランスよく含まれており、天然のミネラルウォーターそのものと。水道水の蛇口をひねればミネラルウォーターが出てくるんだ、こういうことですよね。県内のシンクタンクは、熊本市民が使用する水道量をペットボトルの水に換算すると年間三十五兆円に値するという試算も出しております。
その地域住民が今直面している問題が地下水の枯渇と汚染であります。熊本では、水田に水を張ってしみ込ませる人工涵養によって地下水の枯渇を防ごうとしてまいりました。
ただ、このTSMCの子会社であるJASM第一工場、第二工場は、合わせて年間八百三万トンの地下水を使用することになります。これは立地自治体である菊陽町が使用する年間使用量と同量であります。そして、農地が減れば人工涵養も減ります。つまり、地下水が減少することになります。
環境省に確認しますけれども、熊本地域の水田からの地下水の涵養量や今直面している課題は何か、述べていただけますか。
○政府参考人(伯野春彦君) お答えいたします。
二〇〇八年に熊本県等が策定した地下水管理計画によりますと、熊本地域の地下水涵養量は年間六億立方メートルと見積もられておりまして、そのうち、水田からの涵養量は二億一千万立方メートル程度であるとされております。つまり、水田からの涵養が全体の約三分の一を占めております。
熊本地域の地下水保全上の課題としては、熊本市のホームページでは、宅地化や転作により水田の作付面積は年々減少し続け、地下水減少傾向の要因となっていると分析されております。
以上でございます。
○辰巳分科員 今読んでいただいた中には最後にこうあるんです。地下水を守るためにも水田を守っていくことが必要、こういう話なんです。政府の文書で、環境省が出している冊子の中ではっきり述べております。地下水を守るためには水田を守っていくことが必要、こういうことなんです。
熊本県と熊本地域十四市町村が策定している熊本地域地下水総合保全管理計画でも、地下水の減少は、流入量、涵養量ですね、と流出量、採取量あるいは湧水量のバランスが崩れている結果であり、水量の保全は、涵養量の確保、採取量の削減、両面から取り組む必要がある、こう書かれてあります。特に、TSMCの工場が立地している白川中流域に位置する二市二町、菊池市、合志市、菊陽町、大津町での流出量と流入量のバランスが重要だとされております。しかし、工場立地や開発が進めば結局農地が転用されていくわけです。
確認しますけれども、TSMCの誘致以降、どれぐらいの農地が転用されましたか。経産省。
○政府参考人(野原諭君) 熊本県によりますと、二〇二一年十月から二〇二四年九月にかけて、御指摘の菊池地域におきまして農地面積が二百三十一ヘクタール転用されたと認識しているということでございました。これが、二〇二三年七月時点の農地面積は一万一千三百平方メートルでありますが、その約二%に当たると聞いております。
○辰巳分科員 今言っていただいた農地転用というのは、これは、例えば、熊本へTSMCの誘致に伴って進出してきた企業が八十六社ありますよね。この八十六社の企業進出に伴う農地転用も含まれている数字でしょうか。
○政府参考人(野原諭君) 御指摘の八十六社は、TSMCの進出時点以降、熊本県へ進出又は設備拡張が決定された企業の数を公表情報に基づき経済産業省で集計したものでございます。地元の金融機関からは、この八十六社以外にも公表されていない案件が多数あるという御指摘を受けております。
したがって、この八十六社に対応して農地転用がどれだけ起きたかということは分からない。そういう意味では、八十六社一社ずつチェックしたわけではありませんので、全部が対応して含まれているかどうかというのはよく分かりませんが、先ほどの時点で切ったところではこれだけ転用されているということは熊本県で把握されています。
○辰巳分科員 答弁がありましたように、二百三十一ヘクタールの農地転用があったということです。
ある報道によりますと、一ヘクタールの農地が減るごとに一万トンの地下水が減少するというものもありますので、これは物すごい量だと思うんですね。八百三万トンがJASMの第一工場と第二工場で採取される水。それに加えて、農地が減っているということですから、涵養量は二百三十一万トン減ることになるわけですよね。
経産省にもう一回聞きますけれども、様々な企業の進出があります。今分かっているだけでJASM、TSMCの誘致に伴って八十六社という話がありましたけれども、この企業でどれだけの水田や農地が転用されたか、あるいはどれだけの地下水が採取されるのか、これは把握していますでしょうか。
○政府参考人(野原諭君) 熊本県の方で地下水保全推進本部を立ち上げておられまして、JASMによる取水の将来影響等も含めて調査を行った結果、影響は局所的というふうに報告されております。
今後、熊本県の地下水保全推進本部におきまして、関連企業の進出も含めた周辺開発の影響についても調査をする予定と聞いています。
○辰巳分科員 局所的だという中身がよく分からないんです、具体的なことをおっしゃいませんから。地元の懸念は物すごいものがあるわけです。今申し上げたような命の水である地下水が取られていく。
企業が進出しますと道路ができる、宅地ができるということになりますので、どんどんコンクリートで舗装されていくと、結局、涵養量も農地転用とともに減っていくということになるわけです。地下水を維持するバランスが崩れる。JASM第三工場も取り沙汰されていますから、国策としてTSMCを誘致したのは経産省ですから、当然熊本の地下水の危機に責任を負わなければならないと思うんです。熊本県民は、開発規制とともに、二十年、三十年先の長期にわたる地下水の将来予測、収支ですよね、出ていくもの、入ってくるもの、これを求めております。
経産省は、この間、毎回の会議の中でTSMCによる地元への経済波及効果をちゃんと計算して誇示しているわけです。だったら、熊本県民が懸念している地下水は大丈夫なのか、将来予測を国の責任でちゃんと調べるべきじゃないですか。大臣。
○国務大臣(武藤容治君) 辰巳委員から御指摘をいただいた水の問題でありますけれども、私どもは、JASMのプロジェクトの成功に向けて、その効果を地域にしっかり根づかせていくためにも、今の水のお話もそうですけれども、地元の御懸念に対して一つ一つ丁寧に対応していくことが重要だと認識しているところです。
経済産業省としても、JASMが地下水保全対策に取り組み、地元住民に対して丁寧な説明や理解を得る活動を行うように指導しているところです。
また、今、参考人からもありましたけれども、熊本県の方の本部も設立されながら実施されるこれからの地下水の影響評価の調査も踏まえつつ、地元の懸念の声にどのような形で国として対応することが適切なのか、熊本県あるいは関係省庁とも今後もよく議論しながら積極的に検討してまいりたいと思います。
○辰巳分科員 地下水の将来予測を国の責任でやってほしい、これが地元住民の願いなんです。国の責任でやるというようなことははっきり大臣は言いませんでした。
懸念に対する丁寧な説明とおっしゃるんですけれども、大臣はJASM、TSMCのホームページを御覧になったことがあるかどうか分かりませんけれども、住民からの声に答える例えば問合せがどこになるかというのはホームページにないんです。聞けないんです。地元の声を吸い上げるという姿勢は今のところJASM、TSMCにはないんです。これが最も県民が懸念しているところなんです。
地下水が将来どうなっても知らない、これは絶対許されませんので、国の責任で地下水の将来予測、地下水を守るということをきちっとやるべきだと言いたいと思います。
いま一つの地元の懸念は汚染です。半導体工場で使用される有機フッ素化合物PFASの問題であります。
先ほど紹介した熊本地下水総合保全管理計画では、白川中流域は浸透性の高い地質、汚染物質も容易に深層に達し、汚染が短期間に広範囲に拡大するおそれがあると述べております。しかも、熊本県は、水俣病による深刻な健康被害拡大防止のための必要な措置を取らず、被害を拡大させてきた歴史があります。だからこそ県民はTSMCを始めとした企業のPFASについても危機感を持って注視しているわけです。
経産省に確認します。
一月二十七日、TSMCは、熊本工場で使用するPFASの種類について経産省を通じて私に回答しました。どういうPFASが使われるのか、答えてください。
○政府参考人(野原諭君) JASMは、製造工程におきましてPFBS、PFPeS、PFBAは使用していると聞いております。
これらのPFASは、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律により製造、輸入、使用が禁止されている物質ではございませんが、JASMとしては、産業廃棄物として専門の外部業者に引き渡す等、適切な対応を取っていると承知しております。
○辰巳分科員 環境省に聞きますけれども、今使用しているPFASについては日本では規制の対象になっていないという話がありました。一問飛ばして、PFBS、PFBAについての海外の規制状況を教えてください。
○政府参考人(伯野春彦君) お答えいたします。
アメリカやドイツ等において、飲料水に関してPFBS等が今後規制される予定であることを承知しております。
例えば、アメリカにおいては、PFBA及びPFPeSの規制はございませんが、PFBSについては規制値として二千ナノグラム・パー・リットル等が設定されており、二〇二九年から施行予定と承知しております。
また、ドイツにおいては、PFBS、PFPeS及びPFBAを含む二十種類のPFASの合算値として百ナノグラム・パー・リットルが規制値として設定されており、二〇二六年から施行予定であると承知しております。
○辰巳分科員 JASMで使われているPFASは日本では規制されていないというんですけれども、海外では規制されているということです。健康被害の懸念から規制されているわけであります。PFPeSもアメリカのニュージャージー州では暫定的な地下水の水質基準を設定して規制しております。
今、日本は規制が緩いわけです。しかし、PFAS規制を強化しようとしているのが世界の流れであります。ところが、その世界の流れに逆行しているのが日本なんですよ。
そこで、PFAS規制強化に対する経産省の姿勢をただしたいと思います。
EUでは、欧州十六の報道機関による国境を越えたPFAS調査が永遠の汚染プロジェクトとして取り組まれました。結果、ヨーロッパ全土の約二万三千か所でPFAS汚染が明らかになりました。欧州化学品庁は二〇二三年にPFAS規制強化案を公表。これは、PFASの残留性、不可逆性などに鑑みて、つまり、未来を含めて人間の命を守るために必要な措置ということで、一万種以上ある全てのPFASの製造、販売、使用を制限しよう、そういう動きが出ています。
この規制強化案について、二〇二三年三月から九月までパブリックコメントの募集が行われました。驚いたことに、届いた五千六百四十二件のパブリックコメントのうち約二割、九百三十八件がEUの当事者ではない日本の企業からのもので、国別で見ますと、スウェーデン一千三百六十九件、ドイツ一千二百九十八件に続く多さなんです。ちなみに、スウェーデンはその九割が規制強化を求めるものとされております。一方、日本企業のコメントは、いずれも規制強化案に強く反対する内容でありました。
EUのパブコメは二〇二三年三月から募集が始まりまして、特に五月に日本企業の提出数が一気に増えました。なぜか。これは、ある協議会が三月二十二日から二十九日にかけて開催したEUのPFAS規制強化へのパブコメ提出を呼びかけるウェビナーが大きく影響していると考えられます。このウェビナーとは、PFASを製造、販売している企業、ダイキン工業、三井・ケマーズフロロプロダクツ、AGCなど十社でつくる日本フルオロケミカルプロダクト協議会という団体が主催したウェビナーであります。
この協議会の二〇二四年八月の最新規制動向という文書で、EUのパブコメについてこう記されております。日本政府や経団連始め、パブコメ提出に協力いただきましたことを感謝申し上げます。
ウェビナーは全十一回開催され、各回の定員は五百名。協会はたくさんの御参加に感謝を述べており、最大で五千五百名の企業関係者が参加したと見られております。これだけの参加は企業、業界またがっての参加ですよね。
これは経産省自身が各業界団体に対してウェビナーへの参加を呼びかけたということではないですか。一体幾つの団体、何社に対して呼びかけたんですか、大臣。
○政府参考人(野原諭君) 経産省といたしましては、御指摘の欧州PFAS規制案に関するウェビナーが企業や団体にとって有用な情報提供の機会になるということから、一般的なイベント案内の一環として本ウェビナーが開催される旨、所管団体に開催案内を共有したというふうに報告を受けております。
共有の方法についてはメールや口頭等で周知を行ったということでございまして、ウェビナー自体が行われたのは約二年前でございますので、現時点で当時具体的な周知先がどこだったのかという情報は保存されておらず、残っておりません。
○辰巳分科員 一般的なイベントとおっしゃいますけれども、経済産業省の素材産業課長自身がパブコメを送っていたということも分かっているんです。また、素材産業課の所管でもないオフィス家具協会、アパレル・ファッション産業協会、西日本プラスチック製品工業協会などが、経産省から案内されたんだ、こう言っているんです。経産省全体が乗り込んで規制強化反対の旗を振ってきたということじゃないですか。
このパブコメは課長だけの判断で出したんじゃないですよね。大臣とも示し合わせていますよね。
○政府参考人(野原諭君) 欧州のPFAS規制案は、一万種以上あるPFAS全てを対象として欧州域内での製造、使用、上市を禁止するもので、必需品の貿易制限にもつながり、日本を含む世界中のサプライチェーンが混乱するおそれがあるということで、世界中からパブコメがあって五千六百件超パブリックコメントが集まっていたということで、非常に広範な製品、業種に及ぶものでございますので、関連する産業は非常に広いわけでございます。その後も議論がヨーロッパで続いておりまして、代替物質が利用可能になるまで規制の猶予期間を設けるなど、特例措置に変更されるなど、いまだに議論が続いている案件でございます。
そういう関係が広いので、関係する所管のいろいろなところに周知していたということだと思いますし、当時の経産大臣は西村大臣でございまして、西村大臣の御了解を得て素材産業課長名でパブリックコメントは意見を出したというふうに聞いております。
○辰巳分科員 経産省ぐるみでやったということが明らかになりました。世界中のパブコメと言うんですけれども、今言ったように、EUの規制案に対してスウェーデン、ドイツに次いで日本が三番目なんです。しかも、それを政府が大臣込みで経産省ぐるみでやっていたのは日本しかないわけです。
二〇二三年五月三十日に、経団連の部会ですけれども、経産省の素材産業課の企画官が講演しているんです。こう言っています。回答がなければ規制案を認めることになる。自社、業界に関連する物質について除外や猶予期間の対象化の措置が講じられるためには、具体的な根拠を提示しつつパブリックコメントへの回答を含めてEUに働きかけることが重要だと。経産省が財界と一緒に呼びかけていたということも明らかになったわけです。
大臣、他国の地域の規制について政府が多数の企業に働きかけて反対のパブコメを殺到させるなど、内政干渉と言われても仕方がないんじゃないですか。
○国務大臣(武藤容治君) PFASをめぐる今の世界の動きというのは、委員もそうですけれども、私自身も地元でもそういう声もお聞きしているところもあり、今の参考人からのお話もそうですけれども、EUはEUで先行してルール作りをやるというところもありますし、先生御承知のとおりアメリカでもいろいろな動きが今出ています。
そういう中で、今おっしゃられたように、今回新しくこういうのをやりますよということで私の許可を得るということになったら、多分私は、先生のおっしゃられている意味ではなくて、承知していただけるような機会は平等に示していくべきだろう。産業振興の立場からいっても、企業の皆さんによく御理解いただくというところではコミットしていくべきではないかという気がしております。
そして、PFASの関係については、今、厚生労働省あるいは環境省の方で水質基準を全国的に基準値をもう一回算定する等々いろいろな動きもある中で、国民の皆さんあるいは産業界の皆さんにもしっかり御理解いただきつつ前に進めていかなくてはいけないだろうと思っていますので、委員の御指摘の点もありますけれども、意図するところは私どもと違うかなという気がしております。
○辰巳分科員 この日本政府の異様な動きに、国際的な非営利機関のChemSecというところがあるんですけれども、こう言っているんです。日本は化学物質汚染と無縁ではない。一九五〇年代に工業排水が水俣湾に流され、深刻な中毒を経験した水俣病などの産業公害の歴史がある。このような歴史があるにもかかわらず、日本にある世界有数の化学産業は多くのPFAS化学物質を製造又は使用している。日本の現状に警鐘を鳴らしているわけです。日本として余りにも恥ずかしいことだと思いますよ。
環境省に改めて聞きます。環境や人命あるいは健康よりも経済が優先されたのが水俣病の教訓ではないですか。いかがですか。
○政府参考人(中尾豊君) お答え申し上げます。
水俣病につきましては、平成十六年の水俣病関西訴訟最高裁判決におきまして、昭和三十四年の時点で、国はいわゆる水質二法に基づいて、熊本県は熊本県漁業調整規則に基づいて、それぞれ対策を講じる義務があったにもかかわらず、それを怠った責任があると判示されてございます。
このように、国が経済成長を優先させ、水俣病を発生させた企業に対して長期間にわたり適切な対応をすることができず、被害の拡大を防止できなかったという経験は、初期対応の重要性を示すとともに、科学的不確実性のある問題に対し、不確実であることを理由に対策を遅らせるのではなく、科学的知見の充実に努めながら予防的な対策を講じるという予防的な取組の方法の考え方に基づく対策も含め、適切な対応の在り方を問いかけており、今日に通じる課題を示していると考えております。
○辰巳分科員 まさにそのとおりですよ。経済成長を優先した、これが水俣の教訓ですよね。そして、今、予防原則に基づいてPFASを規制強化しようというのが世界の流れです。それに逆行しているのが日本政府です。
大臣、PFAS不使用の感光材が日本の企業によって開発されているんです。規制強化反対一辺倒ではなくて、規制の中で新たなイノベーションが起きるということは日本の経済が高度成長期のときにも経験してきたじゃないですか。そして、何よりも命と健康を守ることを最優先にする、これなしに経済成長はないんですよ。イノベーションはないんですよ。私はこのことを強く申し上げて質問を終わりたいと思います。
以上です。