NHK厳重注意は番組制作への干渉 辰巳氏が撤回要求
![]() (写真)質問する辰巳孝太郎議員=19日、衆院総務委 |
日本共産党の辰巳孝太郎議員は19日、2025年度NHK予算審議が行われた衆院総務委員会で、18年にかんぽ生命の不正販売を告発した番組「クローズアップ現代+」を巡り、森下俊三NHK経営委員長が上田良一会長(いずれも当時)に行った厳重注意は、番組制作への干渉であり撤回すべきだと主張しました。
放送法は、番組編集は自主的規律に委ね、放送業務に関与しないNHK経営委員会は個別の番組編集に干渉できないと定めています。
辰巳氏は、番組放送後に日本郵政がNHKに名誉毀損(きそん)だと猛抗議をしたが、番組内容は正しく、「NHK側の発言を問題視しガバナンスとして検証を求めたのは適切ではなかったのではないか」と質問。加藤進康日本郵政代表執行役副社長は「番組内容は事実」「ガバナンス体制に対する抗議は適切ではなかった」と初めて認めました。
辰巳氏は、NHK監査委員会事務局が作成した「ガバナンスに瑕疵(かし)はなかった」とする調査結果を示し「当時の経営委員会の対応は放送法違反と言われても仕方ない」と指摘。「厳重注意は撤回し、今後一切の圧力を受けないと明言すべきだ」とただしました。
NHKの古賀信行経営委員長は「当時の経営委員会も深く遺憾の意を表している。経営委員会は番組編集に関与できないとの認識を改めて徹底したい」と述べ、稲葉延雄会長も「視聴者・国民に説明責任を果たすことが重要だと考えている」と述べました。
衆院総務委は、NHK予算を賛成多数で承認しました。
2025年3月24日付「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
まず最初に、NHK経営委員会委員長の基本姿勢を確認したいというふうに思っております。まず、古賀委員長、NHKと国民・視聴者との関係において最も大事だと考えておられるのは何でしょうか。
○参考人(古賀信行君) 私は、NHKというのは公共放送でありますから、やはり全国あまねく、どんなときでもきちんとお届けするというのがまず一義でありまして、中身については、正確性がある情報、そして願わくば、私は、良質で国民が世界に向けても誇れるような番組を作っていっていただきたい、このように考えております。
○辰巳委員 私は、国民・視聴者との関係でやはり大事なのはそれぞれの信頼ではないかというふうに思います。番組の内容はもちろんのことなんですが、NHKの運営に関して公平あるいは公正に行われているのか、これが非常に大事ではないかというふうに思うんです。
今日は、その信頼を揺るがした、かんぽ生命の不正販売報道においてNHK経営委員会がNHK会長に圧力をかけたのではないかという問題を取り上げたいと思います。簡単に事件を振り返りたいと思います。
二〇一八年四月の二十四日に放映されたかんぽ生命の不正販売番組の報道後、七月の七日、七月十日には続編制作のための情報提供を呼びかける動画がSNSに投稿されました。直後の七月の十一日に日本郵政側が上田当時の会長に宛てて、犯罪的営業を組織でやっている印象を与えると申し入れて、ツイッターに投稿した動画の削除も求めました。
後日、番組関係者が日本郵政に説明をした際に、番組制作と経営は分離しているため会長は番組制作に関与しないと発言したことを郵政側は殊更問題視しまして、番組制作、編集の最終責任者は会長であることは放送法上明らかと改めてNHKに抗議をして、NHKのガバナンスの検証を求めました。番組は動画を削除しまして、計画をされていた続編の放送延期となりました。
九月の二十五日、日本郵政の鈴木康雄副社長がNHK経営委員会の森下俊三委員長代行と面会をいたしました。その場で森下氏は鈴木氏に、経営委員会に正式に申し入れるよう助言をしたとされています。
十月の五日に日本郵政グループ三社長がガバナンス検証を求める申入れを行いました。十月の二十三日、経営委員会は上田会長をガバナンス強化などを名目に厳重注意して、日本郵政に対しては会長に厳しく伝え注意したとする文書を送付しました。十一月六日には上田会長は事実上謝罪する文書を郵政側に届け、郵政側は十一月七日付で、経営委員会に対しそれを了とする文書を届けたということでございます。これが一連の経過でございます。
まず、総務大臣に確認をしたいと思います。放送法の三十二条、個別の放送番組の編集その他の協会の業務を執行することができない、あるいは第三条、放送番組は法律に定める権限に基づく場合でなければ何人からも干渉され又は規律されることがないという規定、これは何のためにあるんでしょうか。
○政府参考人(豊嶋基暢君) お答えいたします。
まず、放送法三条につきましては、これは、放送番組の編集は放送事業者の自主的な規律に委ねられるべきとの趣旨から設けられた規定であると承知しております。
また、放送法三十二条につきましては、一項において経営委員会の委員は協会の業務を執行することができない旨を定めており、第二項において経営委員会の委員が個別の放送番組の編集について干渉することができないことを明確化する旨を定めているものと承知しております。
○辰巳委員 NHK経営委員会は、会長の任命や予算、事業計画などの議決を行うNHKの最高意思決定機関であります。NHKの運営を国民の利益に沿うものにするために、公共の福祉に関し公正な判断を行うことができて広い経験と知識を持つ人を国会が同意して首相が任命するものであります。
古賀委員長に改めて確認をしたいと思うんですが、経営委員会はいかなる理由があっても番組内容に介入はできないということですね。
○参考人(古賀信行君) 私、考えますに、経営委員会というのは、番組に介入どころか、私は余り論議すべきではないと思っています。番組を論議することが、いろいろな議論が出ますから、私は就任以来、委員会では論議することもやめようというふうに今訴えかけているところでございます。
○辰巳委員 はっきりした答弁をいただいたというふうに思います。
それでは、NHKの報道に猛抗議を行った郵政側に改めて確認したいと思うんですね。放送後、郵政側が、詐欺、押売などの犯罪的営業を組織ぐるみでやっているかの印象を与えるものであり、名誉を著しく毀損するとたんかを切ったわけですよね。郵政側に確認します。一連の経過からして、このNHKの番組の内容は結果的にはおおむね正しかったということでよろしいですね。
○参考人(加藤進康君) お答え申し上げます。
かんぽ生命保険商品の募集問題につきましては、二〇一九年の十二月に不適正募集として監督官庁の処分を受け、二〇二〇年の会見におきまして当社社長の増田も発言しているとおり、お客様の信頼を裏切り、御契約者の皆様に不利益を発生させた事案として位置づけておりますので、御指摘のNHKの番組内容はおおむね事実として、当社グループ全体できちんと対応すべきものであったと認識しております。
今後は、ステークホルダーの様々な御意見に真摯に耳を傾け、早期の問題把握と解決に取り組んでいく考えであります。
○辰巳委員 郵政が三度にわたって抗議し、あるいは書簡をNHK側に送りつけた。このときには、一番組制作者が番組制作と経営は分離しているため会長は番組制作に関与しないと発言したことを殊更問題視して、番組制作、編集の最終責任者は会長であることは放送法上明らかなんだ、こう抗議してガバナンスの検証を求めたわけですね。ただ、一番組制作者がやり取りで、その場で言った言葉を、鬼の首を取ったように日本郵政という大企業が大上段でガバナンスの検証を文書で求めるというのは、私は、言葉は悪いですけれども、子供じみた揚げ足取りの嫌がらせだというふうに言わなければならないと思うんですね。
改めて聞きたいと思うんですね。一連のやり取りの中で発せられたNHK側の発言を殊更問題視してNHKのガバナンスとして検証を求めること自体が適切ではなかったんじゃないかと私は思うんですけれども、いかがですか。
○参考人(加藤進康君) お答え申し上げます。
二〇一八年当時、当社グループの三社長がNHKの経営委員会に対しましてガバナンス検証を求める申入れを行ったことは承知しておりますが、当時の三社長がどのような意図、目的でこの申入れを行ったかの詳細までは承知しておりません。
しかしながら、現時点におきましては、NHKのガバナンス体制に対して抗議を行ったことは当社グループから申し入れる内容としては適切なものではなかったのではないかと考えております。
○辰巳委員 重要な答弁が出たと思うんですよ。三回の抗議、そして書簡を送りつけたことは適切ではなかった。もちろん、その抗議の中にはガバナンスの検証も含まれているわけですから、ガバナンスの検証自体を求めたことも適切ではなかったと、郵政側から重要な答弁がされたというふうに思います。適切ではなかった、これは当然のことだと思うんですね。
ただ、ガバナンスを口実に、NHKの経営委員会よりNHKの当時の上田会長に厳重注意がされてしまったわけであります。しかし、実際はガバナンス問題そのものが存在をしてこなかったと私は思います。
抗議があった際に、監査委員会の事務局は編成局と上田会長へのヒアリングを実施しております。私は、そのときの監査委員会の事務局が作成した「郵政三社からの経営委員会宛て書状への対応について」という文書を入手しまして、今日、資料にもつけております。ここには、調査内容の詳細と、最後には調査結果が記されております。古賀委員長、調査結果を読み上げていただけますでしょうか。
○参考人(古賀信行君) 調査の結果、本案件が危機管理対応の責任者である編成局計画管理部長、局長(大型企画開発センター長)、専務理事、会長にいち早く報告され、会長の了承を得ながら組織として対応したこと、局長が直接説明するという通常より手厚い対応を行い、さらに会長が直接当事者の社長に説明していることから、協会の対応についてガバナンス上の瑕疵があったとは認められないと記載されております。
○辰巳委員 ですから、監査委員会としても瑕疵はないと、ガバナンスについてはそういう結論が出されているわけですね。
しかし、今あったように、郵政の抗議というのはガバナンスに対する抗議ではなくて、郵政側の抗議というのはNHKが放映した報道の中身そのもの、ここが本丸だというのは、この間に公開をされてきた議事録で私は明らかだと思うんですね。
十月の二十三日の経営委員会の議事録を見てみますと、例えば、森下氏は、本当は彼らの気持ちは納得していないのは取材の内容、あるいは別の委員は、彼らの本来の不満は内容にあって、内容についてはつけないから、その手続論の小さな瑕疵のことで攻めてきている、こうあるわけですよね。
そして、この間の議事録が公開をされて明らかになったのは、経営委員会自身が番組の内容を議論して、番組の内容あるいは取材手法に対して介入とも取れるやり取りをしていたんじゃないかということだと思うんですよ。
十月二十三日の議事録を見ますと、森下代行はこう言っています。今回の番組の取材も含めて極めて稚拙といいますかね、さっき取材が正しいという話もあったけれども、取材はほとんどしていないんだ、実際、現場に行っていないと。そんなことはないと思うんですよ。全く詐欺行為だとか、自分たちに合うようなストーリーで言葉を取っている、それで郵政の連中が怒っちゃったんだと。こういうやり取りを十月二十三日の議事録の中でははっきりとしているわけですよね。
冒頭、郵政側からは、書簡を送りつけたこと、つまりガバナンスを含めて検証を求めたことそのものが不適切だったということを答弁されました。そして、監査委員会の中でもガバナンスの問題はないということも言われました。問題は、この中身について、経営委員会がごちゃごちゃと取材手法についてもやっている。
古賀委員長、先ほど古賀委員長は経営委員会というのは放送内容の中身について議論することも慎むべきなんだという趣旨のことをおっしゃったと思うんですよ。この間、何年もの間、この内容について介入があったのかどうなのか。ガバナンス云々、そして書簡のやり取りもした、厳重注意もやった、このことでNHK経営委員会はいろいろなところで、もちろん前代の委員長なども答弁されてきたと思うんですけれども、去年の十二月にこの議事録が出て、その中身を見てみると、やり取りを見てみると、当時の経営委員会のやり取りというのは、放送法違反と言われても仕方のないやり取りがあったんじゃないかと私は思うんです。率直に、古賀委員長、あの議事録を見てどう考えますか。
○参考人(古賀信行君) 議事録は、和解のときに世の中に公開させていただきました。議事録はきちんと作って公開すべしという法の趣旨にのっとって、現経営委員長として、それは責任を持ってやるべきだと思いましたからやりました。
ただ、中身について、私も読みました、委員がおっしゃるような観点もあろうかと思いますが、私自身の感覚は感覚であります。ただ、中身が云々というよりは、私は、非常に反省すべきは、番組について言い方はともかくこういう議論がなされたこと自体が非常に疑惑を招き、いろいろな取り方を生む。
したがって、私としては今後にしか責任を持てませんが、今後については、先ほど申し上げましたように、経営委員会の場で番組については論議しない、議論しない、これを徹底してまいりたい、こういうことを胸に誓っている次第でございます。
○辰巳委員 これからの経営委員会がどういう立場で運営に対して臨んでいくのかという決意を語られたと思うんですが、ただ、事の経過、議事録を見てみますと、ガバナンス問題を口実に厳重注意もしているんです。だけれども、郵政側も、あるいは監査委員会にもあるように、ガバナンス問題というのはそもそも口実なんですよ。そういうことで厳重注意をしていいのかということがやはり問題にされてきたわけですよね。
私は、古賀委員長が今できるのは、NHK会長への厳重注意の撤回だと思うんですよ。撤回だと思うんですよ。そのまま撤回するべきやと私は思います。委員長、どうですか。
○参考人(古賀信行君)先ほど来申し上げておりますが、二〇一八年十月に当時の経営委員会が上田元会長に注意を申し入れたということは事実であります。ただ、注意に至る議論の中で、過去の番組に関する意見、感想、こういうものが出たことによって、委員がおっしゃるように、番組編集に介入したのではないか、こういう疑念を持たれているわけでございます。このことについては、当時の経営委員会自身もその後、深く反省しているという旨をホームページにも掲載してあります。
したがって、当時の経営委員会もそのことについては深く遺憾の意を表しているわけでございますから、私としては、先ほど来申し上げていますように、放送法三十二条の規定のとおり、経営委員が個別の番組の編集に関与できない、このことをもう一回きちっと認識を徹底させて運営してまいりたい、このように思っている次第でございます。
○辰巳委員 古賀委員長、当時の経営委員会は何を反省しているんですか。もうちょっと具体的に述べていただけませんか。
○参考人(古賀信行君) 注意に至る議論の中で過去の番組に関する意見あるいは感想が出たことで番組編集に介入したのではないかという疑念が持たれたことについて当時の経営委員会が反省している、こういうことであります。
○辰巳委員 まさに疑念を惹起させるような議論をしているわけです。ガバナンスと言わなければできないよと。ガバナンスの問題というのはないのに、それを口実にやっているわけですよね。ですから、私は、古賀委員長は厳重注意そのものを撤回するべきだというふうに思います。
二〇一八年の四月のスクープがありまして、続編が一年以上遅れてしまった、これは非常に悲しむべきことだというふうに思っております。私は、今ここに至っては、四月に報道されたNHKの番組というのが間違いではなかった、しかし名誉回復が現場にされなければならないというふうに思っています。一つの番組には、作り手の膨大な労力、情熱が注がれています。今回でいえば大スクープですから、記者や現場にとっては血沸き肉躍る、全身全霊で番組に当たったと私は思うんですよね。かんぽ生命が不正の事実を認めておりますので、現場の名誉回復を私は改めて稲葉会長にしていただきたいというふうに思っております。
稲葉会長、現場の名誉回復を図るためにも、番組が間違っていなかったと、そして金輪際どこからの圧力も受けないということを明言していただけますか。
○参考人(稲葉延雄君)この件は私が会長に就任する前の話でございまして、詳細な事実関係を承知しているわけではございませんけれども、当該番組に関しては放送の自主自律あるいは番組編集の自由が損なわれたという事実はなかったと聞いてございます。
ただ、その上で、一般論として申し上げますと、NHKの経営委員は放送法で個別の放送番組の編集に干渉することを固く禁じられているわけでございまして、今後もそれをしっかり遵守していただきたいと強く思ってございます。そうしたことを担保する意味でも、議論の内容について議事録をしっかり残して視聴者・国民の皆様に公開し、経営をアカウンタブルな状況にしておく、説明可能な状況にしておくということが非常に重要なことだというふうに考えてございます。執行部としても常にそのような考えの下でNHKの経営に当たってございます。
○辰巳委員 現場の奮闘を願って、質問を終わります。以上です。