補正予算案 大軍拡・大企業に巨費 能登被災者・くらし支援を
2024年度補正予算案が9日に審議入りしました。衆参両院の本会議で各党が代表質問を行い、日本共産党の辰巳孝太郎衆院議員、井上哲士参院議員が質問に立ちました。大軍拡や大企業支援に巨費をつぎこむ同案を批判し、能登地域の被災者支援や賃上げなど暮らしの支援強化を求めました。
![]() (写真)質問する辰巳孝太郎議員=9日、衆院本会議 |
辰巳・井上両氏は、補正予算案への能登災害対策費の3倍となる、過去最高の8268億円もの軍事費の計上は、財政法が特に必要な経費に限っている補正予算の趣旨に反すると批判しました。
辰巳氏は、今年度上半期の訪問介護事業所の倒産は過去最高だと指摘し、削減された訪問介護の基本報酬を戻し、減額分の補てん措置を行うよう要求。「介護保険への国庫負担増、賃上げ助成をすぐやるべきだ」とし、全てのケア労働者の賃金・処遇の抜本的改善を求めました。
また、生活保護費の大幅減額をめぐり全国29地裁で提起された「いのちのとりで裁判」は、基準引き下げ処分の取り消しを認めた判決が19件に上ると強調。「政府は控訴せず、生活保護費の減額をやめ、引き上げを決断すべきだ」と迫りました。石破茂首相は、係争中の事案だとして答弁を拒否しました。
辰巳氏は、補正で1兆円の巨費を半導体メーカーのラピダスに投入しようとしているとして「税金での肩代わりはやめるべきだ」と批判。カジノと一体の大阪・関西万博の中止を求めました。森友学園問題の公文書の全面開示を要求しました。
森友文書 全面開示を
日本共産党の辰巳孝太郎議員は9日の衆院本会議で、森友学園への国有地売却を巡る財務省の公文書改ざん問題をめぐり、政府が全容解明に背を向け、財務省は検察に任意提出した文書の存否も明らかにせず不開示としているとし、公文書の全面開示を求めました。
辰巳氏は、森友事件で近畿財務局職員だった赤木俊夫さんが自死に追い込まれたことについて石破茂首相が「人が一人死んでいる。人生もあれば、家族もあった」とし、再調査の必要性に言及していたと指摘しました。
財務省が文書の存否を明らかにせず不開示としたことについては、情報公開・個人情報保護審査会が3月、「取り消すべきだ」と答申しています。辰巳氏は、「森友事件はまだ終わっていない」として、「文書は全面開示すべきだ」と迫りました。
石破首相は、公文書の開示については、継続中の訴訟だとして「訴訟外で述べるのは差し控えたい」と背を向けました。
2024年12月10日付「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、二〇二四年度補正予算案について石破総理に質問します。
まず、能登地域の被災者支援について聞きます。
一月の地震から十一か月が経過、国などの支援が行き届かない中、能登に住み続けたいとの思いで悩み苦しんでいる被災者を、九月には記録的豪雨が襲いました。劣悪な環境で避難所生活を再び繰り返さざるを得ない状況です。被災者は今、先の見えない不安に直面しており、生活となりわいを再建できる希望の見える支援が必要です。
医療費や保険料の免除期限が十二月末に迫っています。政府は速やかに延長を決定し、周知徹底すべきです。そして、命、暮らし、なりわいを支える支援を、豪雨災害も含めた全ての被災者を対象に迅速に行うべきです。
次に、ケア労働者の処遇改善について聞きます。
介護、医療、保育などのケア労働者の現場は、低いままの賃金、長時間労働などを苦にした離職が進み、物価高騰の下でも上がらない賃金が離職者を更に増大させています。
今年度上半期の訪問介護事業所の倒産は、過去最高となりました。訪問介護報酬の基本報酬が削減されたからではありませんか。この介護崩壊ともいうべき事態の打開には、基本報酬を戻した上で減額分の補填措置を行うべきではありませんか。介護保険への国庫負担増、賃上げ助成を今すぐやるべきではありませんか。
医療従事者、保育士の賃金切下げや低迷も、同様に深刻です。日本共産党は、本日午前、政府に対し、ケア労働者の賃上げに向けた財政措置を求める緊急要請を行いました。全てのケア労働者の賃金、処遇の抜本的改善を求めます。
次に、生活保護行政です。
二〇一三年、生活保護バッシングが吹き荒れる中、最大で一〇%、総額で六百七十億円もの生活保護費の大幅減額が強行されました。このことで、命が脅かされ、暮らしが押し潰され、社会とのつながりも断絶させられています。
全国二十九地裁で提起された命のとりで裁判では、基準引下げ処分の取消しを認めた判決が全体で十九件です。原告勝訴の流れは明確です。誰一人取り残されないというなら、政府は控訴せず、生活保護費の減額をやめ、引上げを決断すべきではありませんか。
生活保護の違法運用も深刻です。
群馬県桐生市では、極めて深刻な人権侵害も常態化しています。ここでは、申請時に警察OBが同席するなどして威圧的な態度を取り、生活保護利用者を排除と取締りの対象としてきました。総理、こんな運用を政府はいつまで許すのですか。
かつてのバッシングには自民党議員も加わりました。生活保護への偏見をなくし、低過ぎる捕捉率を上げ、生活保護制度を文字どおり最後のセーフティーネットとして機能させるべきではありませんか。
一方、政府は、大企業には空前の大盤振る舞いです。
補正予算案では、一兆円もの巨費を半導体メーカー、ラピダスに投入しようとしています。ラピダスには名立たる日本の大企業が出資していますが、総額はたったの七十三億円。本当に魅力のある事業であれば、なぜ少額の民間投資にとどまっているのでしょうか。半導体の安定確保は、本来、半導体メーカーとともにユーザー企業が自らの責任で行うべきものです。税金で肩代わりすることはやめるべきです。
大阪・関西万博について聞きます。
万博会場は、今も埋立てが続く現役の廃棄物処理場であり、一日二十五メータープールで九つ分のメタンガスを始め有害ガスが出続け、三月二十八日には爆発事故が起きました。補正予算案では会場内の安全確保費が計上されていますが、災害が起きれば二十万人以上が孤立してしまう万博をやめることこそ、一番の安全確保となるんじゃないですか。
開幕まで四か月。チケットは前売り一千四百万枚の販売目標で到達は七百万枚と、半分です。もう、赤字にならないよう頑張りますでは話になりません。赤字は一体誰が最終的に負担するのか、明確な答弁を求めます。
日本共産党は、賭博であるカジノと一体の大阪・関西万博の中止を求めます。
最後に、森友事件です。
私は、国有地が不当に値下げされた挙げ句に、公文書が改ざんされ、近畿財務局職員の赤木俊夫さんが自死に追い込まれた森友事件を参議院で追及してきました。政府はいまだに全容解明に背を向け、財務省は検察に任意提出した文書の存否も明らかにせず、不開示としています。
石破総理はかつて、人一人が死んでいる、人生もあれば、家族もあったと、再調査の必要性も述べていました。先日のこの本会議でも、文書の公開については、関係法令に基づき適切に対応すると答弁しています。
今年三月、情報公開・個人情報保護審査会は、この財務省の不開示決定は取り消すべきだと答申しました。ならば、これらの文書は全面開示すべきではありませんか。
補正予算案には軍事費八千二百六十八億円を計上していることは、補正予算を特に緊要な経費に限っている財政法二十九条に反するものであり、ましてや、補正として過去最大規模を計上し、当初予算と合わせて九兆円にも及ぶ軍事費で戦争国家づくりを進めることは断じて許されないことを述べて、私の質問を終わります。
○内閣総理大臣(石破茂君) 辰巳孝太郎議員の御質問にお答えを申し上げます。
能登地域の被災者支援についてのお尋ねでございます。
令和六年能登半島地震の被災者などに対する医療の取扱いは、一部負担金は本年十二月まで、保険料は来年三月分まで、免除分を財政支援の対象としております。その後の支援につきましては、現在、被災状況や市町村などの御意向を踏まえて検討を行っており、速やかにお示しをいたしてまいります。
これまでの数次にわたります予備費での対応に続き、今回の補正予算案には、状況に応じて切れ目ない対応を迅速に行うため、被災地の要望を踏まえた支援策を盛り込んだところでございます。
これにより、豪雨により再び被災された方々に対しましては、雇用調整助成金の特例の創設や、住宅・生活再建支援、なりわい再建支援、公費解体など、地震と同等の支援を行うことといたしております。
活気のある能登を取り戻すため、引き続き、被災自治体のお声も伺いながら、一刻も早い復旧と創造的復興、被災前よりもよい能登になった、そう言っていただけますよう取組を進めてまいります。
訪問介護への対応や介護、医療、保育分野の賃上げなどについてのお尋ねを頂戴いたしました。
訪問介護につきましては、今年度の介護報酬改定で基本報酬を見直す一方で高率の処遇改善加算を措置いたしており、その影響につきましては、引き続き丁寧な把握に努めてまいります。その上で、訪問介護につきましては、人材確保に特に課題があるものと認識をいたしておりまして、今般の経済対策の支援措置も併せて活用いたしてまいります。
介護保険制度への国庫負担増についてでございますが、この制度は、社会保険方式の下、保険料、公費でそれぞれ五割を負担する仕組みといたしております。公費負担割合を引き上げることには、したがいまして、慎重であるべきと考えております。
介護、医療、保育などの分野におきます人材不足に対し、今年度の報酬改定による対応や、今般の補正予算案に盛り込みました支援策などを通じ、更なる賃上げに取り組んでまいります。
生活保護制度についてのお尋ねを頂戴いたしました。
生活扶助基準の改定に対する訴訟について、控訴せず引上げを決断すべきとの御指摘につきましては、いずれも判決が確定をしておらず、係争中の事案でございますため、お答えは差し控えさせていただきます。
桐生市における生活保護の運用について、生活保護の申請権の侵害はあってはなりません。厚生労働省及び群馬県におきまして、適切な運用が確保されますよう対応している、このように認識をいたしておるところでございます。
生活保護制度は最後のセーフティーネットであり、保護を必要とする方に確実かつ速やかに保護が実施できますよう、生活保護の申請が国民の権利であることを周知いたしますとともに、相談支援機関などとの連携を確保するなどの取組を進めてまいります。
次世代半導体の開発に取り組むラピダスプロジェクトについてのお尋ねを頂戴いたしました。
半導体は、経済安全保障の観点から重要な戦略物資であり、供給が途絶いたしました場合には幅広い産業に影響が及びます。また、その投資は、地域経済への大きな波及効果ももたらすものでございます。
こうした背景から、政府といたしましては、半導体の国内生産基盤を構築し、サプライチェーンの強靱化と地方創生を図っていく考えでございます。
ラピダスが取り組みます次世代半導体は、将来の経済成長を左右する最重要技術ですが、海外のトップメーカーも含めて量産にはまだ至っていない、極めて野心的な取組でございます。そのため、民間資金のみでは量産の実現は困難であり、国が一歩前に出て支援をしていくべきもの、このように考えております。
今後の量産化に向けましては、民間からの更なる資金調達を拡大させますとともに、今般策定したAI・半導体産業基盤強化フレームに基づきまして、次世代半導体の研究開発や量産投資に向けた支援を行ってまいります。
大阪・関西万博についてであります。
会場の安全確保に万全を期することは当然のことでございます。御指摘がありましたメタンガス対策につきましては、博覧会協会において、有識者の意見を踏まえ、本年六月に作成した会期中の安全対策に基づいて、換気設備設置などの対策を講じてまいります。
災害時の対応につきましても、本年九月に博覧会協会が策定した防災実施計画に基づき、関係機関と連携をして、来場者の皆様方の安全確保に向けた対策を進めてまいります。
こうした対策を着実に進め、安全に大阪万博が開催できますよう準備を進めてまいります。
また、博覧会の収支につきましては、博覧会協会において赤字にならないように取り組んでいくものと承知をいたしております。その上で、政府といたしましても、博覧会協会と緊密に連携し、機運を醸成いたしますとともに、博覧会協会の予算執行をモニタリングしながら、適正な事業運営を確保いたしてまいります。
森友学園事案についてお尋ねを頂戴いたしました。
赤木さんがお亡くなりになられましたことにつきましては、改めて、謹んでみたまの安らかならんことを心よりお祈りし、御遺族の皆様方にお悔やみを衷心より申し上げるところでございます。
お尋ねの文書は、現在係属中の訴訟に関わるものであり、訴訟外で申し上げることは差し控えたいと存じます。
森友学園事案につきましては、国民の皆様方からの様々なお尋ねに対しまして、今後とも丁寧に説明していく必要があるものでございます。関係法令に基づき適切に対処するというのは、極めて当然のことでございます。
以上でございます。