水道技術系職員の増員急務 技術力回復へ国が支援
![]() (写真)質問する辰巳孝太郎議員=4日、衆院総務委 |
日本共産党の辰巳孝太郎議員は4日の衆院総務委員会で、自治体の上下水道職員が不足し、このままでは維持自体が困難になっているとして、政府の対応をただしました。
辰巳氏は、自治体の上下水道職員が23年前の6割にまで減少し、小規模自治体では災害に立ち向かうことも困難になっていると指摘。能登半島地震の被災地に支援に入った名古屋市を例に挙げ、派遣された職員以外に、残って業務に対応した職員や後方支援の職員の超過勤務手当などが派遣元自治体の持ち出しになっている実態を突きつけました。総務省の大沢博自治財政局長は、自治体が基準を定めれば派遣元に残って業務に対応した職員らの残業代などを一般会計から水道会計等に繰り入れることは「可能だ」と答弁しました。
辰巳氏は、想定を超えた災害支援業務で、時間外労働が過労死ラインを上回る150時間を超える職員も生じたとして、「このまま職員が減少すれば、想定される南海トラフ地震など対応できない。技術系職員の増員は急務だ。技術力の回復ができるよう支援を」と要求。村上誠一郎総務相は「技術職員の確保については都道府県に要請している。職員の研修については国交省の関係団体で実施されていると承知している」などと、増員への支援要求には背を向け、自治体任せの姿勢をあらわにしました。
2025年3月8日付「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
今日は、自治体職員、とりわけ技術系の職員の減少が災害対応に甚大な影響を及ぼしているという観点から質問をしたいと思います。
埼玉県の八潮市の陥没事故についてまず聞きたいと思うんです。国土交通省は、同様の事故を防ぐため、陥没箇所と同様の大規模な下水道管路を対象とした緊急点検と、補完的な路面下空洞調査を行いました。その調査の結果を教えていただけますか。
○政府参考人(松原英憲君) お答え申し上げます。
国土交通省では、今回のような陥没事故を未然に防ぐため、事故が発生した翌日に、陥没箇所と同様の大規模な下水道管路を有する流域下水道管理者に対し、目視や管口カメラによる緊急点検と、これを補うための空洞探査車による路面下空洞調査を要請いたしました。
緊急点検対象の下水道管路延長約四百二十キロメートルに存在するマンホールの点検の結果、管路の腐食などの異状が三か所で発見されました。また、路面下空洞調査が約三百二十キロメートル実施された結果、下水道管路に起因する空洞の可能性がある箇所は確認されませんでした。
○辰巳委員 今回の事故のような大規模施設以外でも陥没事故というのは起きております。老朽化したインフラ施設の点検が緊急的に求められると思うんですけれども、ただ、自治体の下水道事業や水道事業の技術職員というのが年々減ってきておりまして、そして財政的にも厳しい。ちょっと聞きたいんですけれども、網羅的に点検を行える体制というのはあるんでしょうか。
○政府参考人(松原英憲君) お答え申し上げます。
地方公共団体における技術職員の減少などの中においても上下水道施設を適切に管理していくことは重要と認識しておりまして、国土交通省では、予防保全型の施設管理を推進するためのガイドラインの策定や、点検、調査等の施設管理に関する技術開発などの技術的支援に取り組むとともに、維持管理のうち、施設の点検や調査、その結果に基づく計画的な更新、改築などの重要な対策について財政的支援を行っております。
また、上下水道事業を持続可能なものとするために、広域連携、官民連携などの事業運営の基盤強化に加えまして、分散型システムの活用など、地域の特性に応じた適切な施設管理が重要でございまして、これらの取組を推進するため、ガイドラインを策定するなどの技術的支援を行っているところでございます。
さらに、DX技術も活用し、施設管理や老朽化対策を高度化、効率化していく必要があります。このため、地方公共団体向けの分かりやすいDX技術カタログを今年度中に取りまとめるなど、その速やかな実装に向けて取組を進めてまいります。
○辰巳委員 今の答弁ではやはり、自治体の現場の技術職員の減少について、これだけ大変なんだよというような思いというのは全然伝わってこないと思うんですよね。
この間、水道事業、下水道事業の職員については二〇〇〇年以降、推移を提出してもらいました。二〇〇〇年の水道事業は職員が六万六千五百三十八人なんですね。下水道事業では四万二千六百一人でありました。ただ、この職員が、二〇二三年には水道事業で四万二千四百二十五人、下水道事業は二万六千六百十七人。つまり、この二十三年余りでいずれも約六割まで減少をしているわけなんですね。水道事業でいえば、一九八〇年をピークに減少を続けてきております。
政府は健全化とか、今ありましたように効率化とか適正化とかいろいろ言うんですけれども、二〇〇五年から二〇一〇年までの集中改革プランで職員が減少傾向だった地方自治体に徹底した人員削減というのを促してきたわけなんですよ。ただ、その後、地方自治体の職員数というのは二〇一八年の二百七十三万六千八百六十人となって以降横ばいか微増となっているのに、上下水道の職員というのは減少を続けているわけなんですね。これは何でなんですか、いかがですか。
○政府参考人(大沢博君) お答えいたします。
水道事業におきましては、水道メーターの検針や施設の維持管理などの業務の外部への委託が進んだことなどにより職員数が減少してきたものと考えています。
また、下水道事業においては、これまでの整備によって普及が進み、整備推進から維持管理などへとシフトしてきたことなどにより職員数が減少してきたものと考えております。
○辰巳委員 いやいや、今そう言うけれども、じゃ、こう聞きましょうか。昨年一月に発災した能登半島の地震、その後、九月には豪雨災害によって被災地のインフラというのは再び甚大な被害を受けたわけです。能登地方の六市町、この上下水道の職員の人数というのをちょっと教えていただけますか。
○政府参考人(松原英憲君) お答えいたします。
能登六市町の上下水道の職員の人数は、水道協会と下水道協会の統計によりますと、七尾市が二十人、輪島市が十三人、珠洲市が九人、志賀町が九人、穴水町が七人、能登町が十三人でございまして、合計七十一人となります。
○辰巳委員 今言っていただいた人数は、例えば二〇〇五年、二十年前ですけれども、水道は九十三人いてるんです、下水は七十九人いてますから、二〇二〇年末でいうと、今おっしゃっていただいた数字でいうと、大体五割、四割に職員の数というのは減っているわけですよね。ただ単なる外注していますとかそういう話ではなくて、全体が減った上で、そして技術系だって当然減るわけですよね。これがやはり災害対応に甚大な影響をもたらしている、そういう意識を持たないと私は駄目だと思うんですよね。
これは能登には限りません。とりわけ小規模の自治体では地震による甚大な災害になかなか立ち向かえない。能登六市町には、発災直後から全国の県や市町村から応援職員というのが派遣をされました。全国から災害復旧のために派遣するスキームというのは阪神・淡路大震災のときに設けられたわけですけれども、各自治体が相互に協力して災害復旧に当たるというものであります。
国交省が事前に示していただいた資料によりますと、今回の派遣というのは、全国の自治体数、延べの職員数でいうと、水道では百六十六の都、県、市、延べ二万四千百四十七人、下水道でいうと二十四の都、県、市、延べで一万五百九十四人ということなんですね。今回の能登半島地震の発災後の救援のための短期の派遣において、例えば名古屋市では水道で三千百三十四人、下水道で二千六百十四人を派遣しております。
そこで、私は、名古屋市の公営企業評議会の方から話を伺いました。費用についてなんですね。災害派遣時の費用負担というのは、被災自治体である受援自治体が負担をして、特別交付税措置があるとされています。しかし、派遣をされた職員の基本給、派遣元である名古屋市に残された職員が派遣された職員の分まで業務をこなす、そういう職員の給料や超過勤務手当は事実上派遣元の自治体の負担となっております。超過した負担額というのは名古屋市でも数億円になるのではないかと述べておられました。
ちょっと確認したいと思うんですけれども、公営企業会計の原則でいえば、結局は派遣元の受益者である名古屋市民の負担になってしまうのではないかと思うんですが、実態を調べるべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(大沢博君) 負担につきましては、派遣元自治体から被災地へ派遣された職員の基本給については、当該職員が派遣元自治体の職員たる身分に基づき活動を行うものであることから、派遣元自治体が負担すべきものと考えられます。
また、派遣元自治体の本来業務に携わる派遣元に残された職員の給与や超過勤務手当については、派遣元自治体が負担すべきものと考えられます。
応援派遣を行う自治体においては、このような考え方を踏まえた上で派遣していただいているものと認識しております。
その上で、派遣元自治体が追加的に負担することとなります派遣職員の旅費でありますとか時間外勤務手当などにつきましては、特別交付税措置を講じているところでございます。
○辰巳委員 一般会計からの繰入れは可能ですか、それだけ。
○政府参考人(大沢博君) お答えいたします。
企業会計の場合ですけれども、企業会計の場合は繰り出し基準におきましてその負担関係を定めていると承知をしております。
○辰巳委員 一般会計からの繰入れは可能なのか、イエスかノーか。
○政府参考人(大沢博君) 可能であります。
○辰巳委員 このことを知らない自治体というのもなかなかありますので、もちろん一般会計から繰入れしたとしても、それは結局名古屋市民の負担ということになりますからね。本来国が補填するべきだとは思いますけれども、これの周知も求めたいというふうに思っております。
先ほど名古屋市など大きな自治体では職員をたくさん派遣したという話をしましたけれども、こういった派遣される職員ですけれども、災害の応援に行っているわけですから、日常的に名古屋市の上下水道に従事して、技術、技能を身につけたベテランの職員が特に派遣されているということであります。
派遣元である名古屋では、派遣された職員の業務を補って、今あったように残業が続いたというふうにも聞いております。災害時に必要な力は日常業務で培われるというのが技術職、技能職では常識になっていると聞きました。政府は技術力の持続可能性とか効率化を掲げて広域化を促してきたんですけれども、しかし比較的小さい自治体ではこの災害対応能力というのはもう既に失われているというふうにおっしゃるんですね。ですから、現場の職員からは、災害派遣の中核を担ってきた大阪市とか名古屋市とか横浜市とか、そういった自治体でもこのまま職員が減り続けていけば、今後想定される南海トラフの地震が起きれば対応できなくなるという危惧も示されているんですね。
もちろん全ての自治体で技術系の職員の増員を図ることが急務だと思うんですけれども、大臣に聞きたいと思うんです。ただ、しかし既に技術力を失っている比較的小さい自治体では職員を補充しただけでは技術力の回復というのはなかなかできないという話でございました。比較的大きい自治体、中小規模の自治体が現状で何とか技術力を維持している。名古屋とか大阪とか、そういう都市で実践的な研修ができるようにするなど、災害対応能力を回復させていくような取組が私は必要だと思うんですけれども、大臣、いかがですか。
○国務大臣(村上誠一郎君) 辰巳委員の御質問に答えます。
まさに委員御指摘のように、これは今後の地方自治における大きな課題だと思っています。だから、私はそういうことも含めて前回、三百の市と言ったわけでございます。
上下水道事業については、事業に従事する職員数が減少傾向にある中、将来にわたり持続可能な経営を確保するための取組を進めることが全国的に課題となっているというふうに考えております。
このため、総務省としましては、中長期的な経営の基本計画である経営戦略を適切に策定、改定し、計画的に組織、人材の強化を図りつつ業務効率化にも取り組むよう自治体に助言してきたところであります。
また、平時に技術職員不足の市町村を支援するとともに、大規模災害時の中長期派遣要員を確保するために、各都道府県に対し、令和五年度から令和十年度までの技術職員確保計画を策定した上で、当該計画を必要に応じ毎年度見直すよう要請いたしました。さらに、令和六年九月に総務大臣から各都道府県知事宛てに書簡を発出し、技術職員の確保に計画的に取り組んでいただくよう要請しているところであります。
なお、上下水道事業に従事する職員の研修につきましては、国土交通省の関係団体において技術習得に関する研修等が実施されていると承知しております。引き続き関係省庁で連携して適切に対応していきたい、そういうふうに考えております。
○辰巳委員 職員の増員を求めて、私の質問を終わります。以上です。