市町村への派遣労働拡大は問題 特定地域づくり事業巡り
2025年03月18日
![]() (写真)質問する辰巳孝太郎議員=18日、衆院総務委 |
衆院総務委員会は18日、2019年に議員立法で成立した特定地域づくり事業推進法の改定案について質疑を行いました。日本共産党の辰巳孝太郎議員は、改定案は労働者派遣法を規制緩和するもので、安心して働ける仕組みにはなっていないと批判しました。
同法は人口減少地域に限って組織された事業協同組合が届け出によって労働者派遣業を行えるようにしたもの。改定案は、同組合が組合員以外に派遣できる労働者数の上限枠を緩和するほか、市町村への派遣に限り、組合員に対する総派遣時間の5割にまで拡大します。
辰巳氏は事業協同組合に雇用されている派遣労働者の平均給与をただすと、総務省の望月明雄審議官は「平均19・7万円」だと答弁。辰巳氏は一般的な労働者の平均賃金よりも低いと指摘しました。また、退職職員の動向を問うと、望月審議官は退職者の24%に当たる29人が所在不明だと明らかにしました。
さらに、市町村への派遣実績がある同組合数をただすと、23年度で108組合中3組合にとどまっていることが望月審議官の答弁で明らかになりました。
辰巳氏は、大多数が要望する事業にはなっていないと指摘し、「派遣ではなく、市町村が直接雇用すべきだ。必要なのは人口減少地域の地域おこしの対策だ」と主張し、同法改定案への反対を表明しました。
2025年3月21日付「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
この間、今法案が提案をされてきた背景には、島根県の海士町が行政として、観光協会を中心に地元の事業者と協働した地域づくり、仕事おこしにより移住者等の就労環境の整備を行ってきた取組があると思います。人口減少地域に限定をした労働者派遣法の規制緩和であって、真に地域で安心して働き続けられる仕組みにはなっていないとして、我が党は反対をしてまいりました。
今回の法改正の内容を提案者に改めて確認したいんですけれども、なぜ、組合員になれない市町村に限って事業協同組合を構成する組合への派遣の五〇%まで拡大するということになっているんでしょうか。
○法案提出者 (加藤竜祥君) お答え申し上げます。
特定地域づくり事業協同組合は、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合として、一つは、市町村は組合員になることができない、二つ目は、組合員以外の者による員外利用は組合員による員内利用の二〇%までという法的な制約がございます。
員外利用規制の緩和について政府が組合と市町村へのアンケート調査を行ったところ、運営する施設やイベント時期などの人手不足に対応したい市町村と、冬の農閑期などの組合員による利用が少ない時期に派遣先を確保することで雇用を増やしたい組合のニーズが一致していることが判明いたしました。
そこで、員外利用規制について特例を設け、当該組合の地区の市町村に対して組合の職員を派遣する場合については、員外利用を員内利用の五〇%まで緩和することとしております。これにより、豪雪地帯においても農閑期である十二月から三月までの四か月の派遣先を確保することが容易になるなど、組合による雇用の充実強化、ひいては地域社会の維持及び地域経済の活性化に更に資することが期待をされております。
以上でございます。
○辰巳委員 要は、事業協同組合をつくったんだけれども、農閑期や観光のオフシーズンなどには派遣できる仕事がないので派遣先を確保したいということだと思うんですね。人口急減地域では確かに賃金収入を得る仕事が少ない、そういうところでの事業協同組合では苦労されているというのはよく分かるんですが、ただ、仕事がないから仕事のありそうなところに派遣先を求めていくということだと、これはやはり単なる労働者派遣事業であって、細切れの就労とかになってしまう懸念があると思います。組合で働いている就労者のやりがいをそぐことになる懸念があるんじゃないかというふうに思います。
事業協同組合の運営は、事業費のうち四分の一が国費、八分の一の特別交付税措置を含む総額二分の一、つまり半分は市町村、自治体で助成をしているということであります。現行法の審議の際は提案者から、組合が雇用する派遣労働者は無期雇用型に限定をされ、事業費への公的補助がつくことから一般的な派遣労働者よりも身分は安定するという説明がありました。そこで、確認したいんですけれども、現在、組合に就労している方の賃金は平均でどれぐらいか、お示しいただけますでしょうか。
○政府参考人(望月明雄君) お答え申し上げます。
派遣職員の賃金につきましては、地区内の他の事業者の給与水準等の地域の実情を踏まえて各組合において判断されているところでございますけれども、組合から提出されました令和六年度交付申請書類によりますと、派遣職員の賃金は全百八組合の単純平均で月十九・七万円となっているところでございます。
○辰巳委員 やはり一般的な労働者の平均賃金よりもかなり安いということだと思うんですね。
もう一点確認したいんですけれども、これまで事業協同組合で働いてきた方は何人で、その後の動向について教えていただけますか。
○政府参考人(望月明雄君) お答え申し上げます。
令和二年度の制度開始以降、派遣職員として採用された方は、昨年の十月一日時点となりますが、六百五十三人となっております。このうちで、同時点で雇用されている方は四百十五人、六四%でございまして、退職された方は二百三十八人、三六%となっております。
また、この二百三十八人の内訳になりますけれども、退職後の動向ということで、組合員の企業に直接雇用された方が六十五人、組合が所在する市町村内で組合員以外の企業に就職や起業等をされている方が五十四人となっておりまして、合計では百十九人、約五〇%の割合になります。その他、組合が所在する市町村の外に転居された方が九十名、また、組合が所在を把握できていない方が二十九名といった状況になっております。
○辰巳委員 二十九名が所在不明ということなんですけれども、総務省として、働いている人の要望とか、あるいは退職者の状況とか、なぜ退職したのかという理由はつかんでいますかということに対しては、つかんでいないということでありました。
それで、職員の大体六割が十代、二十代、三十代ということなんですけれども、単なる人手不足の解消、そのための派遣先の確保ではやはり続かないと私は思うんですね。
現場でこの事業のことを研究されている識者からお話も伺いました。若者のライフステージを生かすことができるように運営している、あるいは働く人の個人のニーズをつかみながら行っているところはうまくいっているんだ、一方で、仕事を生み出すことなく雇用の確保、派遣先の確保ということなら単なる労働者派遣事業、普通の派遣になってしまうということを指摘されていました。今回の法改正、農閑期や観光のオフシーズンだから働き場所がないんだ、だから市町村の仕事にも派遣できるように緩和するというのは、まさにこういう学者の皆さんの指摘にも当てはまるのではないかというふうに思っております。
確認しますけれども、現状ですね、現在の事業協同組合の組合数、これまでの市町村への派遣の実績を教えてください。
○政府参考人(望月明雄君) お答え申し上げます。
特定地域づくり事業協同組合の組合数でございますが、現在、全国の三十六道府県で百八組合が活動しております。
市町村に派遣を行った組合の実績でございますけれども、令和四年度に二組合、令和五年度に三組合が派遣を行ったものというふうに承知しております。内容でございますが、公民館の事業管理の補助、また子育て支援業務などに従事したというふうに伺っているところでございます。
○辰巳委員 続けてお伺いしたいんですけれども、五〇%まで規制緩和が必要だという要望はどれぐらいあったんでしょうか。
○政府参考人(望月明雄君) お答え申し上げます。
まず、一番最初でございますが、令和五年の地方分権改革の提案募集で、組合が安定した通年雇用を実現できるよう、中小企業等協同組合法の員外利用規制の緩和の要望がございました。まずこの段階で緩和の要望でございます。
また、令和六年八月には、全国四十二道府県で構成されます特定地域づくり事業推進全国協議会から、組合員以外への派遣が可能な利用量割合の拡大を求める要望があったところでございます。
これを受けまして、令和六年十一月に組合を対象に実施したアンケート調査の結果によりますと、員外利用規制の緩和を必要と考える組合は、回答のあった八十八組合中二十九組合に上ったという状況でございます。そのうち員外利用の具体的な期間を示した要望が十八組合からございまして、うち五〇%までの緩和ということで七組合、これが最も多かったというふうな状況でございます。
また、回答の中、具体的に、豪雪地帯である本町におきまして組合では特に冬期間の派遣先の確保に苦慮している、せめて十二月から翌三月までの四か月間をカバーできるよう上限を緩和していただければ等の要望があったところでございます。
○辰巳委員 時間が来ましたので最後にしますけれども、大多数の要望にはなっていない、むしろ少数かなというふうに思っております。であるならば、自治体自身が直接雇用して、人口減少地域をどう地域おこしをしていくのかという対策そのものが求められるということを述べて、質問といたします。
以上です。