ラピダス 国民負担の危険 衆院委で辰巳氏 青天井の支援枠組み
![]() (写真)質問する辰巳孝太郎議員=2日、衆院経産委 |
日本共産党の辰巳孝太郎議員は2日の衆院経済産業委員会で、ラピダス・半導体産業支援法案を巡り国の巨額出資による国民負担のリスクをただしました。
同法案のスキームでは、半導体企業ラピダスへの国有財産の譲渡と引き換えに経済産業省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が同社株を取得し、将来の同社の株式上場以降に売却し、公的資金を回収することになっています。
辰巳氏は、国が400億円の公的資金を投入して3年で破綻し、約280億円もの国民負担をもたらした半導体メーカー「エルピーダメモリ」の問題を追及。同社への政府出資を可能とした2009年の産業再生法の改定の際、当時の二階俊博経産相が、期間を限った「緊急異例の措置」だと説明していた事実を示し、「今回の法案はIPAが恒久的な制度として出資できる。しかもはっきりした上限は示されず、青天井に膨張する危険がある」と政府の無反省な姿勢を批判しました。武藤容治経産相は「(ラピダス支援は)マイルストーン(中間目標)を外部専門家に評価してもらう」とし、まともに答えられませんでした。
辰巳氏は「ラピダス支援の審査(中間評価)の内容(文書)はほとんど黒塗りで事業がうまくいっているのか、国民や国会はわからない」と指摘し、審査の中身を公開し、国会、国民に対する説明責任を果たすよう要求。経産省の野原諭商務情報政策局長は「機密事項に配慮しつつ可能な範囲で公表する」と答えました。
辰巳氏は、ラピダスにはすでに1兆7000億円以上の公的資金投入が決まっており、「失敗したら国民負担は比べものにならないほど巨額になる」と警鐘を鳴らしました。
2025年4月3日(木)付け「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
ただいま佐原委員の方から、原発の話、泊原発の再稼働の話があって、やはり今大臣の答弁を聞いていたら、原発動かせよ、動かすよというふうにしか聞こえないわけですよね。
やはりこれは言っておかなきゃならないと思うんですけれども、我が党の議員団が二月にラピダス千歳工場の方に視察に行きました。そのときに、会社の方の方は、一棟で十六万キロワット必要だと想定している、これは四棟まで計画しているということですから、六十万キロワット以上になる、北海道電力に対しても六十万キロワット必要だということを言っているんだということですね。
先日、小池社長にも来ていただきましたけれども、ラピダスにとって三つキーワードがあって、その一つがグリーンなんだと社長はおっしゃっていたわけですね。
私は、グリーンだと言うんだったら、それはやはり再エネ一〇〇%の電気でやる、それを目指す、やっていくんだという方向にかじを切らなきゃならないと思うし、そういう方向で経産省もやっていくということをはっきり言わなければならないというふうに思っております。
さて、今日は、公的資金の投入についてただしていきたいというふうに思います。
本法案は、何の実績もないラピダスに国有財産をそっくり譲渡することに加えて、政府からの資金の出資、民間融資を呼び込むための債務保証、登録免許税や法人事業税などの軽減など、至れり尽くせりの公的支援を行うものであります。
今回の法案のスキームは、このラピダスへの国有財産の譲渡と引換えに、経産省所管の独立行政法人情報処理推進機構、IPAが株を取得して、将来のラピダスの株式上場、これはIPOですけれども、以降に売却することで公的資金の回収を図るということも含まれております。
今日改めて振り返りたいのは、エルピーダメモリであります。国が出資をして大失敗をしたエルピーダは、NEC、日立、三菱電機のDRAM事業が統合した、いわゆる日の丸メモリーの代表的企業でありましたけれども、大失敗をいたしました。
一九九九年に制定をされた産業活力再生特別措置法、いわゆる産活法ですね、これは、大企業が不採算部門を切り離して成長部門へ資源を集中させる事業再構築、いわゆるリストラ、人減らしを支援をするものでありました。
二〇〇九年の改正では、リーマン・ショックに端を発した世界的な金融経済恐慌に対応する必要があるということで、一般事業会社への出資を可能とする法改正が行われました。
結局、この法改正による公的資金の投入はエルピーダのみでありましたので、事実上、エルピーダのための法改正をしたということが言えると思います。
エルピーダメモリの事業再構築計画を経産省が認定をして、四百億円もの公的資金が投入されましたけれども、その後、三年で破綻をいたしました。負債総額は四千四百八十億円。約二百八十億円の国民負担がもたらされました。
武藤大臣、当時、このときの審議の当時ですね、大臣は、経産委員の一人として、このときの法案審議に関わっておられましたので、いろいろやり取りがされていたのは覚えているだろうと思います。
そこで確認をしたいと思うんですけれども、この一般事業会社への出資というのは、今も少し触れましたけれども、内外の金融秩序の混乱のため、企業が出資による資金調達が困難になっている期間内に限って行われるとされていたと思います。
当時、二〇〇九年ですね、二階経産大臣だったんですけれども、四月一日のこの衆議院の経産委員会で、これは異例の措置なんだ、緊急の異例の措置なんだという答弁をした部分があるんですけれども、ここを経産省、紹介していただけますか。
○政府参考人(野原諭君) 二〇〇九年四月一日の衆議院経済産業委員会における三谷委員との質疑におきまして、当時の二階経済産業大臣より、今お尋ねのように、異例の措置だという認識は我々としては持っております、世界的な金融危機の影響により、金融機関からの融資が難しい状態にまで自己資本が減少する企業が生じるおそれが現にあるわけですから、これらに対して看過することはできないということで、緊急異例の措置として我々はこうしたことを考えておるわけでございますという答弁をしております。
○辰巳委員 今ありましたように、あくまで異例の措置なんですね。
我が党は、一般事業会社への公的資金の注入という踏み込んだ大企業救済を行うにもかかわらず、何ら経営責任が問われない仕組みになっていることが経営のモラルハザードを招いて、際限のない国民負担につながりかねないということで断固反対をいたしました。
そこで大臣に聞きたいんですけれども、大臣は、三月二十五日本会議、先日ですね、エルピーダの失敗について、要因等をしっかり検証し、次の政策立案に反省を生かすことが政府の責任だと答弁をしたわけなんですが、一方で、予算委員会における私の質問に対して、このエルピーダは誰も責任を取っていないということをお認めになりました。
大臣、今回もし失敗すれば、誰が責任を取るんですか。大臣が責任を取ってくれるんでしょうか。
○国務大臣(武藤容治君) ラピダスが取り組む次世代半導体の量産、これはもう世界のトップ企業も実現に至っていない野心的な取組であります。
様々な課題があることは事実であり、量産技術の確立、また顧客の獲得、資金調達、人材の確保、育成等の課題を一つ一つ解決していかなければならないということだと思います。
あらかじめ設定したマイルストーンを外部専門家に評価をしていただきながら、事業計画の内容ですとか支援の在り方を検討しながら、経済産業省一丸となってプロジェクトの成功に向けて取り組んでまいりたいと思っております。
○辰巳委員 大臣、私の質問に全く答えていないわけなんですけれども。マイルストーンだと、何か横文字にするとごまかせるみたいな、非常に懸念するんですけれども、要するに、一つ一つ外部の人が検証して、この事業がうまくいっていますよ、目標に達していますよということをやるので安心してくださいみたいな話だと思うんですけれども。
これも以前やりましたけれども、その外部の皆さんがやっているステージゲート審査ですよね。これは私、経産省にお願いして取り寄せました。(資料を示す)これは誰がやっているかも分からないし、内容だってほとんど黒塗りですから。これは、本当に事業がうまくいっているかなんて、我々国民や国会が分からない状況になっているんですよ。これで、十兆円規模の、それ以上の資金を投入していこう、こういう話ですよね。これは非常に心配になります。
二階大臣の先ほどの答弁で、緊急異例の措置と言っていたこの一般事業会社への出資を、今回の法案はIPAが恒久的な制度として出資できるようになるわけですよね。しかも、はっきりとした上限というのは示されておりません。これは青天井で膨張する危険があると思います。
大臣、これは全くエルピーダの反省を酌んでいないと言わなければならないと思うんですけれども、いかがですか。
○国務大臣(武藤容治君) ラピダスを含めた大規模な支援事業は、第三者の評価の下で、事業計画の作成と併せてマイルストーンを設定をし、その達成状況を確認しつつ、事業計画の見直し等を判断する枠組みを構築し、支援を行っていくところであります。
こうしたプロセスを通じて、半導体、AI分野の支援を実施するため、新たな予算が必要とならば、これは当然ですけれども、国会にまた予算案を提出して御議論いただくことになりますし、青天井で支援額が膨張するとの御指摘は当たらないと思っております。
○辰巳委員 特に根拠なく青天井ではないとおっしゃったと思うんですけれども。
経産省でもいいんですけれども、ちょっと確認させてください。
私が今示したこのステージゲート審査、ほとんど黒塗りだ、その外部識者というのも誰かは明らかにはされていない。今は、いろいろな条件がある、あるいは懸念があるということでそういう形にされているかと思うんですけれども、これはやはり一定の期間がたてば審議の中身あるいは外部識者の名前も含めて出すことが国会、国民に対する説明責任を果たすということになると思うんですけれども、その辺り、大臣でも結構ですけれども、どうですか。
○政府参考人(野原諭君) 先ほどもこの場で審議がありましたけれども、個々の企業のビジネス上の機微な情報というのもあります。それから、安全保障上、機微な技術、先端半導体は機微な技術でもありますので、そういう観点からも情報を守らなきゃいけないところがあります。
したがって、それぞれの技術開発の項目についてどこまで進んでいるのかというのを全てオープンに開示してしまうと、ラピダス社のビジネス上の利益を非常に害する面もありますし、その分、同じマーケットで競合している他社が利益を得るということにもなりますから、そこは開示できない部分があるということは御理解いただきたいと思います。
○辰巳委員 今局長申し上げたのは、今の段階の話ですね。これからパイロットをやる、これから量産をやる、今どこまでの技術が進んでいるのか、それを開示できないという説明だったと思います。
しかし、これから、これは法案が仮に通ればですよ、十兆円規模をやる。量産がうまくいくかどうかは分かりませんけれども、しかし、もう数年たてば、今やっているこのステージゲートの審査というのは当時の技術の話であって、それを開示をするということは可能だと思いますけれども、それは検討していただけるんですか。
○政府参考人(野原諭君)少しここでの質疑の繰り返しになってしまう面もありますが、半導体の技術、経営、金融などの専門家が参画する産構審の次世代半導体小委員会において、事業の進捗管理に関するマイルストーン、達成目標ですね、を適切に設定し、その達成状況等を中立的な外部有識者の方々に確認しながら支援を行ってまいります。
その際に、達成状況、見通し等について、機密事項について配慮しつつ、可能な範囲で公表することで、国民への説明責任を果たしてまいります。
○辰巳委員 これから今現在黒塗りの部分も外れていくということで、そういう認識でいいですか、今の答弁。
○政府参考人(野原諭君) 先ほど申し上げた機密事項に該当しないものは開示できるようになると思いますが、機密事項に該当する部分は開示できないということになりますので、それは原理原則に沿ってそういう整理かと思います。
○辰巳委員 機密事項に関わらないところについては、どのような審査が行われたのかについて黒塗りが外れる部分も今後あるという認識ですね。機密事項以外の話ですよ。いいですね。では、答弁ください。
○政府参考人(野原諭君) それは、機密事項でない、あるいはなくなったものがあるのであれば、それは開示をして御説明申し上げるということになります。
○辰巳委員 エルピーダメモリなんですけれども、結局、アメリカのマイクロンテクノロジーに買収されまして、今の広島工場というのはマイクロンメモリジャパン広島工場となりまして、特定半導体の計画の認定を受けまして、最大一千九百二十億円の補助が決まっております。これはどこまでも国民負担ということに依存をしているということですね。
今回、ラピダスには既に一兆七千億円以上の公的資金が投入をされるということになります。
大臣、もう一度確認しますけれども、これは、エルピーダの公的負担というのはありましたけれども、今回もしラピダスが失敗をしたら、国民負担というのはエルピーダと比べ物にならないほどの巨額になるんじゃないですか。
○国務大臣(武藤容治君) ラピダスが実施する委託研究開発というものは、もう委員もずっとこれはお話をしてきたのであれなんですが、外部有識者による厳格な審査を毎年度実施をしながら、計画の見直しの要否も含めて進捗確認を行ってきているところでもあり、今おっしゃられたような、エルピーダと比べ、失敗をしたらということでありますけれども、今回の法案に基づく金融支援についても、次世代半導体等小委員会における外部専門家の意見も踏まえた上での支援を決定するところでもあり、また、進捗管理に関するマイルストーンも適切に設定をしながら、同委員会の意見も踏まえながら、この状況、達成状況ですとか事業計画の進捗をモニタリングしていくわけです。
こうしたプロセスを通じて、ガバナンスを適切に働かせつつ、想定外のリスクの兆候なども早期に把握しながら、成功に向けて全力で取り組んでまいるということでありますので、失敗したらということじゃなくて、こういう形の中でこれを何とか成功させていただきたいということでこの法案を出させていただいているので、御理解をいただきたいというところだと思います。
○辰巳委員 ことごとく聞いたことに答えていただけないんですよ。成功するように頑張りますとしか言うてないわけですね、大臣。そやけど、公的資金がこれだけ投入されて失敗をすれば、それは誰が負担するんですかという非常にシンプルな質問なんです、大臣、これは。別に、何かごまかしていただくような質問じゃないですよ。
公的資金が、これはもちろん一・七兆円どころじゃないですからね。ラピダスに対しては相当な、数兆円規模の、二ナノが終わったらまた数兆円規模。もし失敗したら、これはエルピーダとは比べ物にならないほどの国民負担になってしまうでしょうと。
イエスかノーかで答えてください。
○国務大臣(武藤容治君) 支援額が相当大きい、これはもう事実ですよ。
ですから、そのためのチェック機能を幾つもつくって、成功に結びついていくということになるんだと思います。
○辰巳委員 そのチェック機能が黒塗りばかりだということなんですね、これは本当に。
ラピダスの出資、八社なんですけれども、これは現在のところ七十三億円の出資にとどまっております。
八社の内部留保を私は調べたんですけれども、七十三兆円ですよ。七十三兆円の内部留保を持っている企業が、七十三億円しか出資をしていない。つまり、一万分の一なんですね。一万円持っている人が一円出している、出資している、それぐらいの話なんですけれども、大臣、何でこんなに少ないんですかね。
○政府参考人(野原諭君) ラピダスへの出資の件でございますが、これは、七十三億円というのは、二〇二二年十月に企業八社が出資をしたわけでございますが、その時点というのは、これから会社が立ち上がって研究開発を始めようという段階でございます。二〇二二年十一月にNEDOプロジェクトに採択されて、ラピダスプロジェクトを公表されて、研究開発が始まるわけですけれども、この研究開発が始まる前の段階での出資を集めた段階、ここで各社、トータル八社、合計で七十三億円という話だったわけでございます。
これは参考人質疑で小池社長が説明されていましたけれども、これから技術開発が順調に進んでいって、パイロットラインを立ち上げる、開始になる、量産化の準備に進んでいこうという段階になってまいりますので、既存の株主を始めとする企業とラピダスの間で一千億円規模の追加出資についての調整が本格化しているというふうに承知をしております。
そういう意味では、七十三億円はずっと最初の、スタートの時点での話でございます。
○辰巳委員 何か一千億円ですと言うんですけれども、これは一円が十三円ぐらいになったという話でありまして、これで喜んでええのかという話だと思うんですね。
今回の法案は、経済安保の観点からも、日の丸半導体の公的支援を強力に進めるものだ、こういう話だと思うんですね。
そんな中で、アメリカは中国に対する規制というのを強めてまいりました。しかし、日本の強みは半導体の製造装置、素材だと言われてきたわけですね。
大臣は、私の本会議の質問に対しても、半導体は、チップの設計、製造から、製造装置や部素材、原料に至るまで、多様な産業や技術領域からサプライチェーンが構成されており、一国だけで担うことは困難だ、このため、経産省としては、同盟国、同志国等とのグローバル連携を推進しています、こう答弁しています。
この同志国あるいは等に、中国というのは入るんですか。
○国務大臣(武藤容治君) 御指摘の同志国等又は同盟国等ということにつきましては、必ずしも確立された定義はないということだと思います。ある政策課題において、目的を共にする国を指す言葉として用いられていると承知しています。
その上で、どのような国が同志国に当たるかについては、政策の戦略的な国際展開にも差し障るため、回答は差し控えさせていただきたいと思っております。
○辰巳委員 これは半導体に限りませんけれども、日本の最大の貿易国は今、中国ですからね。安全保障とか経済安保という観点から、そういう囲い込みとか規制強化とか、これで日本の半導体産業がどうなるのかというのは非常に考えなきゃいけないと思うんですね。
もう時間だから私が言いますけれども、これは貿易統計による半導体の製造装置の輸出先とその金額を経産省に調べてもらいますと、やはりこれは中国が一番、二〇二四年の段階ですけれども、五二・九%なんですね。台湾への輸出が一五・三、韓国が一四・三ですから、圧倒的に日本の製造装置の輸出先というのは中国になっているということだというふうに思います。
私は、この間の質疑で、半導体支援というのはアメリカの軍需にも応えるものだということも示してきました。半導体の覇権争いに日本が巻き込まれるということは、日本の強みをむしろ弱めて弱体化させてしまうことにつながると言わなければならないということを申し上げて、今日の質問を終わります。
以上です。