医療崩壊許さない 辰巳氏が自公維合意4兆円削減批判 「どれだけの痛みもたらすか」
日本共産党の辰巳孝太郎議員は3日の衆院予算委員会で、自民、公明、維新の3党が国民医療費の「最低4兆円削減」などを念頭に置いた社会保障削減のための協議体設置で合意した問題を取り上げ、「医療崩壊が起こるのは間違いない。絶対に許してはならない」と批判しました。
![]() (写真)質問する辰巳孝太郎議員=3日、衆院予算委 |
辰巳氏は、石破茂首相も自民党総裁として合意文書に署名したと指摘。2025年度までに国民医療費を最低4兆円削減することを念頭に検討し、早期に実現可能なものを「26年度予算に盛り込んで実行に移すのか」と質問すると、石破首相は削減を念頭に議論することを認めました。辰巳氏は「とんでもない合意だ。年間で最低4兆円削減とは、この間の医療費抑制に照らしても途方もない数字だ」と批判しました。
辰巳氏は、高額療養費の負担上限引き上げで医療費が5330億円削減されることを示し、「がんなど重い病気にかかり、多額の医療費を長期にわたって負担して治療を続ける患者に深刻な影響をもたらす」と強調。00年度以降の医療費抑制を狙った医療制度見直しで、自己負担と保険給付を合わせた医療費ベースでの財政影響が年額1兆円を超えるような例があったのかとただすと、福岡資麿厚生労働相は「06年の診療報酬改定は医療費を1兆円をやや超える削減額の規模だった」と答えました。
辰巳氏は、08年に出産間近の妊婦が七つの医療機関に受け入れを拒否され死亡した事件を挙げ、「06年の1兆円削減が現場の心を折って医療崩壊をもたらした」と指摘。「1兆円で医療崩壊だ。4兆円の削減が一体どれだけの痛みをもたらすのか」と追及しました。石破首相は「(医療)崩壊しないようにやっている。これから先、考えていくものだ」などと強弁しました。
健康格差もたらす 辰巳氏 OTC類似薬適用除外に反対
日本共産党の辰巳孝太郎議員は3日の衆院予算委員会で、自民、公明、維新3党が合意文書で、市販薬と効能が同じOTC類似薬の「保険給付のあり方の見直し」を掲げたことについて、「健康格差をもたらす毒薬入りまんじゅうを国民に強要することはあってはならない」と反対し、3党合意の撤回を求めました。
辰巳氏は「OTC類似薬を保険から外せば、医療保険が負担していた薬剤費負担が減少し、その分患者の負担が増えることは間違いない。しかし患者負担はそれではとどまらない」と指摘。アセトアミノフェン(解熱鎮痛薬・カロナール)は処方箋をもらえば300ミリグラムあたり自己負担1・8円だが、保険適用外の市販薬なら1錠88・9円と49倍になるなどの例を挙げ、「(抑制される医療費の)3450億円が患者負担となるにとどまらず、現在の薬剤費の自己負担分の20~60倍もの負担を迫られる」と強調しました。
福岡資麿厚生労働相は「3党のハイレベル協議体を設置し、これから検討が深められる」などして、見解を示しませんでした。
辰巳氏は、OTC類似薬を保険医療の対象外にすれば、自治体独自の医療費助成の対象外となる懸念を挙げ、子どもが使用するアトピー性皮膚炎や食物アレルギーに伴うかゆみやアレルギー性鼻炎のための主要な治療薬抗ヒスタミン薬など「長期に使用する薬が医療機関ではもらえずに市販薬を購入して治療しなければならない。子どもが疾患にかかっている場合、親は大変な負担となる。払えない家庭は治療をあきらめざるを得ない」と指摘しました。
福岡厚労相は、政府の社会保障削減のための「改革工程」での検討や社会保障審議会部会での議論内容を説明し、「今後さらに協議が進められる」などと保険適用除外に前のめりの姿勢を示しました。
辰巳氏は「国民医療費は減少するが、家庭の医療関係支出は、民間医療の保険や市販薬の購入でトータルの負担は増大する」と強調しましたが、石破茂首相は「(医療制度を維持するための)魔法みたいなことはない」などと負担増大を正当化しました。
2025年3月4日付「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎です。
自民、公明、維新の三党合意について聞きます。
合意では、社会保障削減のための協議体の設置と、二〇二五年までの予算編成の過程で十分な検討を行い、早期に実現可能なものについて、来年度から実行に移すとされました。三党の社会保障削減のための検討について、合意には具体的な数値が書き込まれております。これは数値目標ではなくて具体的な数値です。
パネルを用意いたしました。先に下の方に行きます。
国民医療費の総額を年間で最低四兆円削減するということを念頭に置くと記されております。これは、総理も自民党総裁として合意に署名をいたしました。
総理、今年度末までに、この国民医療費を最低四兆円削減することを念頭に検討を行い、早期に実現可能なものについて、来年の二〇二六年度の予算に盛り込んで実行に移すということですか。総理、いかがですか。
○内閣総理大臣(石破茂君) それは、まさしく今御紹介いただきましたように、国民医療費の総額を年間で四兆円削減することによって、現役世代一人当たりの社会保険料負担を年間六万円引き下げるとされておるわけでございますが、これを念頭に置くことを合意したというものでございます。
○辰巳委員 これはとんでもない合意なんですね。国民医療費の総額を年間で最低四兆円、これは、この間の医療費の抑制施策に照らしても、途方もない数字だと言わなければなりません。
厚労大臣に聞きますが、この間、予算委員会で繰り返し大問題になってきた高額医療費の負担上限の引上げですよね、これは、当初の案で、実行後の財政影響は医療費ベースで幾らになっていますでしょうか。
○予算委委員長(安住淳君) 速記を起こしてください。
福岡厚生労働大臣。
○国務大臣(福岡資麿君) 当初案で申しますと、五千三百億でございます。
○辰巳委員 今国会で大問題になってきた高額療養費の負担上限引上げ、これが、医療費の削減抑制、五千三百三十億円なんですよね。それでも、がん患者など、重い病気にかかり、多額の医療費を長期にわたって負担をして治療を続ける患者さんに深刻な影響をもたらそうとしているわけであります。がん患者の中には、家族の将来のために、治療を中断してお金を残した方がいいのではないかという悲痛な声も出されております。
厚労大臣、もう一度確認しますけれども、二〇〇〇年度以降の医療費抑制を狙った制度の見直しで、自己負担と保険給付を合わせた医療費ベースでの財政影響が年額で一兆円を超えたものは過去ありますでしょうか。
○国務大臣(福岡資麿君) 二〇〇〇年といいますと平成十二年になりますが、二〇〇〇年以降でいえば、医療保険制度の改正では医療費の削減額が一兆円を超えるものはございませんが、診療報酬改定では、二〇〇六年、平成十八年度の改定におきまして、医療費、一兆円をやや超える削減額の規模となってございます。
○辰巳委員 ということなんですね。二〇〇六年のこの一兆円の削減で一体何が起こったのか。
二〇〇八年、東京で、出産間近の妊婦が七つの医療機関に受入れを拒否され死亡する事件が起こりました。政府の医療費の削減で医師や看護師不足を加速をさせ、医療現場を疲弊をさせてきたわけであります。本来助かる命が助からない事態が起こりました。まさに、その二〇〇六年の一兆円の削減が、踏ん張り続けてきた現場の心を折って、医療崩壊をもたらしたわけであります。当時、医師が病院からいなくなる立ち去り型サボタージュ、そういう言葉もありました。
総理、年間の〇・五兆円、五千億円の削減でこれだけの痛みです。一兆円で医療崩壊です。今回の四兆円の削減というものが一体どれだけの痛みをもたらすのか。これは医療崩壊を四回も起こすことになるんじゃないですか。総理、いかがですか。
○国務大臣(福岡資麿君) 先ほど総理も申されましたし、今日この配付資料にもございますが、そもそも、この念頭に置くという書き方については、政府・与党として二〇二三年から二〇二八年にかけて一兆円減少させる、公明党さんの考えも書いてある、そして維新の党の考えも、それぞれ三党の考えを書いてあって、それを念頭に置いて協議を行っていくということでございます。
○辰巳委員 いや、ですから、その念頭に置くという文書に総理も確認の署名をしたわけですよ。そうですよね。総理、どうですか。一兆円で医療崩壊。今回総理が署名された四兆円というのは、まさにその医療崩壊を四回も起こすような途方もない削減になるんですよ。いかがですか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 崩壊しないようにやっているんですよ。崩壊しないために、それぞれの御負担というものもお願いはしていかねばならないものでございます。
今大臣がお答えを申し上げましたように、政府・与党の方針や提言に加えて維新の会が公表された改革案で、国民医療費の総額を年間で四兆円削減することによって現役世代お一人当たりの社会保険料負担を年間六万円引き下げるということは維新の会のお考えでございます。ですから、政府・与党の考え方、そして維新の考え方、それぞれを紹介をいたしまして、それを念頭に置きながらこれから先考えていくものでございます。
私どもは、医療崩壊を目的としてこのようなことをやっているのではございません。誰かが支えていかなければ、このすばらしい制度を今後存続させていくことは不可能でございます。いかにしてこの制度を崩壊させないか、いかにしてこの制度を継続するかということのために私どもは一生懸命考えておるところでございまして、崩壊を企図しておるようなことは全くございません。
○辰巳委員 総理、私の話を聞いていただきたいんですね。過去、一兆円の削減で医療崩壊を起こしてしまったんですよ。起こさないようにするといっても、四兆円の合意を総理は署名されているんですよ。こんなことをしたら、医療崩壊が起こるのは間違いないじゃないですか。これは絶対に許してはならないんです。
三党合意の文書の中には、それだけじゃありません、こうあります。OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しというものが盛り込まれているんですね。
OTC医薬品とは、薬局あるいはドラッグストアなどで処方箋なしに購入できる医薬品であります。OTC類似薬については保険適用除外にすべきだという声が、この間、財界や保険者、一部政党から上がってまいりました。そして、OTC類似薬を保険から外せば、医療保険が負担をしていた薬剤費負担が減少をして、その分患者の負担が増えることは間違いありません。しかし、患者負担というのはそれにとどまりません。
二枚目のパネルを御覧ください。
公定薬価の三割負担、つまり、実際に患者が病院などで処方箋をもらって、それを薬局でお薬をもらう、その自己負担の分ですね。これを赤の部分で記しました。これが自己負担金額でございます。
上から見てみますと、アセトアミノフェン、これは解熱鎮痛薬、いわゆるカロナールと言われるものですけれども、三百ミリグラム一錠当たりで一・八円ですね。しかし、これがOTC医薬品、つまり市販ということになりますと、メーカー小売希望価格では一錠当たり八十八・九円。つまり四十九倍になります。
ファモチジン、これは胃酸分泌抑制薬、ガスターですけれども、十ミリグラム一錠当たり三円ですけれども、OTC医薬品ということになりますと百七十九・七円。何と六十倍になるわけですね。
フェキソフェナジン、これは花粉症の薬、アレグラですけれども、六十ミリグラム一錠当たり三円ですけれども、OTC医薬品では百三・二円で、三十四倍にもなります。
総理、これらで医療費を三千四百五十億円節約できるんだという報道もあります。しかし、三千四百五十億円が保険給付から外れて、市販の薬に置き換わるということになれば、三千四百五十億円が患者負担になるということにとどまらずに、現在の薬剤費、自己負担で払っている分の二十倍から六十倍もの自己負担を迫られることになるんじゃないですか。いかがですか。(発言する者あり)
○予算委委員長(安住淳君) 静粛に。
○国務大臣(福岡資麿君) まず、お示しいただいた表につきましては、単純に薬の価格だけを比較していらっしゃいますが、医療機関に行けば当然、初診、再診が別途その患者さんに発生するということでございます。
その上で言えば、今いろいろ御指摘いただいたことは、まさに今後、三党でハイレベルの協議体を設置し、OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しを含め、国民負担を軽減するための具体策についてこれから検討が深められるものと考えております。
○辰巳委員 これから検討するというんでしょう、これだけの負担増を。むちゃくちゃじゃないですか。
OTC類似薬を保険医療の対象外にすれば、自治体独自の医療費助成の対象外ということにもなります。
私も子供がいますけれども、アトピー性皮膚炎あるいは食物アレルギーに伴うかゆみ、アレルギー性鼻炎のための主要な治療薬には抗ヒスタミン薬があります。臨床で使用されるほとんどに同一成分、剤型、容量のOTC薬があります。
総理、三党合意による医療費の削減は、長期にわたって使用するこれらの薬がもう医療機関ではもらえずに、市販品を購入して治療しなければならないということになる。子供が該当する疾患にかかっている場合は、大変な親御さんの負担となる。払えない家庭は治療を諦めざるを得ない。健康格差の拡大を招くんじゃないですか。いかがですか。
○国務大臣(福岡資麿君) まさに内容につきましては、先ほど申しましたハイレベルによる協議が今後進められるということでございますが、御承知のとおり、OTC類似薬を保険給付の対象から外すことにつきましては、改革工程においても、その検討がなされてきている中におきまして、これまでも社会保障審議会医療保険部会でも御議論いただいています。
その中では、当然、皆保険の持続性を確保する観点から、保険料負担の軽減につなげるべきという御意見がある一方で、医療上の必要性に応じて患者の方が適切な医薬品を選択できるよう何らかの担保措置が必要ではないかといった御意見であったり、医療用と市販薬では、同一の成分であっても期待する効能、効果や使用目的、患者さんの重篤性が異なる場合があり、市販薬の有無で取扱いを変えることが妥当かどうかといった御意見もいただいているところでございます。
そういったことも踏まえて、今後更に協議が進められることと承知しています。
○辰巳委員 大臣の答弁を聞いていたら、やる気満々じゃないですか。子供たちの健康被害、健康格差、これを拡大させることになると言わなければならないと思います。
三党合意に盛り込まれた、与党の、実質的な社会保障負担軽減の効果を一兆円程度生じさせる、この施策の一環として行われる高額療養費の上限の見直しも、あるいは、保険料負担の軽減と引換えに更に負担と上乗せされるのが、まさに今言っていたOTC類似薬の適用除外ということになります。
そういうリスクに備えている人は、例えば民間のがん保険などを購入できます。しかし、それができない人は、払い切れない負担に治療の継続を諦めなければならない方が増えるということになります。国民の医療費というのは減少しますけれども、家庭が行う医療費の関係支出は、民間医療保険の購入や市販薬の購入で、トータルの負担というのは増大をするんじゃないですか、総理。
こんな三党合意を結んでいいんですか。総理の答弁を聞かせてください。
○予算委委員長(安住淳君) 石破内閣総理大臣、間もなく時間が来ますので、簡潔にお願いいたします。
○内閣総理大臣(石破茂君) ですから、委員がおっしゃるような、そういうことによって受診の抑制が起こらないということはきちんと確認をしておかないと、制度自体に対する信頼がなくなります。本当に必要な診療が抑制されることがないように、しかしながら、この制度自体が続いていくように、その接点を見出していかねばならぬので、それぞれの主張を念頭に置きながら、どこに接点を置くかということです。
そこは、世の中に魔法みたいなことはありませんので、どのようにして制度を守っていきながら受診抑制が起こらないようにするかということを、これから先、誠心誠意、全力で考えてまいります。
○予算委委員長(安住淳君) 辰巳君、時間になりましたので、まとめてください。
○辰巳委員 こんな健康格差の拡大をもたらす毒薬入りのまんじゅうを国民に強要することがあってはならない。この三党合意の中止を求めて、私の質問を終わります。
以上です。