診療報酬4割削減 発達障害早期発見に逆行/厚労省の姿勢問われる/衆院厚労委 辰巳議員が追及
2026年05月13日
日本共産党の辰巳孝太郎議員は13日の衆院厚生労働委員会で、厚労省が予定している診療報酬の改定により、通院・在宅精神療法に対する報酬が、精神保健指定医によらない診療の場合は4割減算となる問題についてただしました。
通院・在宅精神療法を巡る診療報酬の改定方針は、発達障害の早期発見・治療を掲げる国や自治体の初診待機解消のとりくみにも逆行し、現場への影響は必至です。辰巳氏は、神奈川県精神神経科診療所協会が実施したアンケートで「外来精神療法の本質と乖離(かいり)した改定」「いわゆるチェーンクリニック対策にはならない」「患者の受診機会が減る」との意見が噴出しており、患者に大きな不利益をもたらす改定だと批判。「収入激減で診療所経営が苦しくなり6月から人員カットに踏み切らざるをえない」という医師の声を突きつけました。
改定の理由をただした辰巳氏に厚労省の間隆一郎保険局長は「質の高い精神医療へ評価を見直した」などと弁解しました。
精神保健指定医は、患者の意思によらない強制的な入院や隔離・身体拘束などの行動制限を判定・実施する法的権限を持っています。辰巳氏は、発達障害児などを診る児童精神科医や小児科医のなかには、「指定医」となる必要はないとして指定を申請しない医師も多く、人道上の観点からあえて指定を受けない医師もいると指摘。「この分野に対する診療報酬を40%も減算するのでは、(経営からの)撤退が現実味を帯びる。初診待機問題の解消とも質の確保とも矛盾する」と批判し、方針の撤回と見直しを求めました。
○辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
来月から、通院・在宅精神療法の診療報酬が、精神保健指定医でなければ四割も減算されることが今年二月に明らかになり、関係者に衝撃を与えております。まず、その診療報酬の改定内容を紹介していただけますか。
○間政府参考人 お答えいたします。
通院・在宅精神療法は、精神科を担当する医師が行う専門的な治療についての評価でございます。令和八年度診療報酬改定におきましては、大きく二点、改定をする予定をしております。
一つは、児童思春期の精神疾患患者の受入れ体制を更に確保する観点から、受入れ体制の整った医療機関への評価である児童思春期支援指導加算の点数を引き上げるとともに、その対象を、前回改定では対象とした月平均八人以上の初診を行う医療機関に加えまして、月平均四人以上の初診を行う医療機関に拡大をするという点が一点。
もう一点は、今委員御指摘がありましたけれども、通院・在宅精神療法を精神保健指定医以外の医師が行った場合については、その医師が精神医療に長期に従事し、現在も精神医療に関する専門的な業務を行っている、そういう医師が実施する場合など、一定の除外対象を設けた上で、原則として所定点数の百分の六十に相当する点数を算定することとしてございます。
○辰巳委員 つまり、今おっしゃっていただいた要件を満たさない非指定医は、これまでと同じ診療をしながら、点数は、従来の五百五十点から四割減の三百三十点にされてしまうということなんですね。
医師からは、余りにもドラスチックな改定だ、診療所の経営が厳しくなるなどの戸惑いの声が相次いでおります。私も実際に医師の話を聞きましたけれども、収入が激減する見込みで、経営が苦しくなって人員カットに踏み切らざるを得ないという声もありました。
神奈川県精神神経科診療所協会の実施をした緊急のアンケートでも、実際の診療能力と評価が一致していない、外来精神療法の本質と乖離した改定、不合理、いわゆるチェーンクリニック対策にはならない、閉院を考える診療所が多数ある、患者の受診機会が減る、患者の不利益が大きい改定などの厳しい声が続出をしております。
確認しますけれども、そもそも今回この要件を厳しくするその理由は何なんでしょうか。
○間政府参考人 お答えいたします。
通院・在宅精神療法は、精神科を標榜する保険医療機関において精神科を担当する医師が、精神疾患の患者に、一定の治療計画の下に、危機介入、対人関係の改善、社会適応能力の向上を図るための指示、助言などの働きかけを継続的に行う治療方法でございます。
こうした治療を実施するためには、精神医療に関する一定の知識、技術が必要であることから、精神医療の質を適切に評価することを主な趣旨としまして、精神保健指定医による治療、あるいは、精神保健指定医でない場合も、専門的な精神医療を担う医療機関に勤務する医師や精神医療に関わって一定の業務を行っている医師を中心とした治療を評価するよう見直すこととしております。
○辰巳委員 今、質という話もありましたけれども、今報酬改定で甚大な影響を受けると考えられているのが児童精神科領域及び小児科なんですね。
精神保健指定医というのは、今少しありましたけれども、患者の意思によらない強制的な入院や隔離、身体拘束といった行動制限を判定して実施するための法的な権限を持つことができるものなんですけれども、そもそも、発達障害児などを診る児童精神科医には、その必要性の有無の観点や人権上の観点から、あえて指定医を取得されていない方もたくさんおられるんですね。同様に、小児科で発達障害児を診ている方も、指定医を取得している人というのはほとんどいないとされています。
これら現場で活躍をされている医師に対する診療報酬が四割もカットされる。つまり、この分野からの撤退ということが、大臣、これは現実味を帯びてくる話になると思うんですよ。大臣、この度の診療報酬の改定で小児科からの撤退が進むということになれば、発達障害を診る先生が減ってしまうのではないか。これは、この間、国が進める発達障害児の初診待機解消、待機時間が非常に長い、これにも逆行することになると思うんですよ。
大臣、こういう診療報酬の改定の見直しは、私は見直すべきだと思うんですけれども、いかがですか。
○上野国務大臣 小児の発達障害や児童精神領域においては、今御指摘がありました初診までの待機等の問題があることを認識しておりまして、これに対し、一定の診療の質を確保しつつ診療体制の充実を図っていくことは重要であると考えております。
こうした考えの下、令和八年度診療報酬改定では、児童思春期の精神疾患患者の受入れ体制の整った医療機関への診療報酬の評価の充実も図ることとしております。
先ほどお話のありました通院・在宅精神療法は、精神疾患の患者に精神科を担当する医師が専門的な治療を行う場合の評価でありますが、一方で、小児科の医師が発達障害等の診療を行うに当たっては、別に小児特定疾患カウンセリング料として評価を行っており、小児科の医師にはこうした点数を活用いただくこともできると考えております。
○辰巳委員 大臣、今紹介いただいた小児特定疾患カウンセリング料というのはあるんですけれども、これは、御存じだと思うんですけれども、最長四年なんですよ、四年が上限なんです。発達障害児を診ている小児科の先生などは、四年で終わるとは限りませんよね。非常に長い期間、発達障害児を診るということになりますから、実際これが使えるかどうか。しかも、これは初回という話ですから、もう既に診ている発達障害児にこれが適用されるかどうかというのはいまだに不透明なんですよね。
これはやはり、二〇一七年の総務省の行政評価局による発達障害者支援に対する行政評価、監視の結果に基づく勧告には、発達障害が疑われる児童の初診待ちが長期化していることから、専門的医療機関の確保のための一層の取組をするということとされておりまして、二〇一九年からは、発達障害診断待機解消事業として、国も都道府県の取組というのを後押ししているわけですね。
大阪府では、発達障害を診断できる医師の研修を実施をして、登録医療機関へつなぐかかりつけ医の育成を行ったり、拠点医療機関と登録医療機関との連携、ネットワークに努めて、待機時間の解消というものに努めているわけですよ。
大阪府では、登録医療機関における待機時間の平均は八・八週間、最長で十二か月、一年待たなきゃいけないという状況ですね。この登録医療機関は八十四あるんですけれども、小児科を掲げている機関は三十五にも上るわけなんです。
今改定は、この登録医療機関やかかりつけ医に打撃を与えて、ネットワークそのものをずたずたにしてしまって、発達障害児を診てくれるところがないということを引き起こしてしまいかねないと私は思っております。
大臣、六月から、来月からの診療報酬改定ですから、これはやるんだという話かもしれませんけれども、やはり、もちろん成人もそうですけれども、とりわけ発達障害児が診療を受けられない、こういうことがないような対応を、六月以降、検討していただきたい。いかがですか。
○間政府参考人 お答えいたします。
質の高い精神医療あるいは小児の発達障害の診断を行っていくということは非常に重要なことだというふうに思っています。その意味で、委員も先ほど改めて言及いただきましたけれども、小児科の先生は特に、小児特定疾患カウンセリング料というのを御活用いただけるということでございます。
その上で、今後、今回の改定の影響については、いろいろ関係者の方からも実情をお伺いするとともに、精神医療の質の向上と診療体制の確保の両面からも、今後も引き続き検討し、必要に応じて適切に対応したい、このように考えております。
○辰巳委員 最後にしますけれども、やはり、今、質の確保という話がありましたけれども、出ている声は、今回の減算の根拠にする指定医という要件そのものがおかしいということなんですよね。だから、この分野の需要というのは年々高まっています、急激に四〇%も減算するのは、やはりこの問題の解決からも矛盾すると思いますし、質の確保という点からも矛盾すると思いますし、子供や親を路頭に迷わすことになりますので、改めて、方針の撤回、見直し、そして今後の検討を強く求めたいと思います。
以上です。