強制性交罪要件ただす 「暴行脅迫」撤廃を

2019年3月26日  
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(写真)質問する辰巳孝太郎議員=26日、参院予算委

日本共産党の辰巳孝太郎議員は26日の参院予算委員会で、強制性交等罪の成立要件の「暴行脅迫要件」を撤廃し、世界潮流となっている、性的行為への同意の有無を要件とすべきだと主張しました。

辰巳氏は、内閣府の調査で無理やり性交をされた経験を、女性の13人に1人がもっているが、6割がだれにも言えないと指摘。片山さつき男女共同参画担当相は「第三者機関に(相談が)少ないということを重く受け止める」と答弁しました。辰巳氏は「相談をしても加害者の違法を認められず、泣き寝入りせざるを得ない状況がある」と告発し、強制性交等罪成立のための刑法の「暴行脅迫要件」が原因だと指摘しました。

辰巳氏は「激しく抵抗できなければ暴行脅迫要件が適用されず、途切れ途切れに抵抗すると心神喪失も抗拒不能(抵抗が著しく困難な状態)も認められない。相手との同意がないのにレイプとされない」と批判しました。

国連の「女性に対する暴力に関する立法ハンドブック」(2009年)は「明確な自発的な合意」がない場合は、性犯罪が成立するとしており、「暴行脅迫要件は撤廃すべきだ」と主張。山下貴司法相は「性犯罪被害の実情の把握等を着実にすすめたい」と述べるにとどめました。

辰巳氏は「同意していない性交は性的自己決定権への侵害なのだから、同意そのものが問われるべきだ」と強調しました。

 

2019年3月27日赤旗より転載

 

議事録を読む
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳です。
被害者に、それまでの自分は死んだ、あのとき本当に死んでおけばよかったと思わせる、魂の殺人と言われる性暴力について聞きます。
まず、強制性交等罪、強制わいせつ罪の認知件数と検挙件数、そして同罪の起訴率を示してください。
○政府参考人(露木康浩君) 認知件数と検挙件数についてお答えをいたします。
平成三十年中の強制性交等の認知件数は千三百七件でございます。検挙件数は、うち千百九十件でございます。また、平成三十年中の強制わいせつの認知件数は五千三百四十件であり、検挙件数は四千二百八十八件でございます。
○政府参考人(小山太士君) 検察統計上、起訴率につきましては一年間の起訴人員数をその年の起訴人員数と不起訴人員数の合計数で割る方法により算出しておりますが、これによれば、平成二十九年の強制わいせつの起訴率は三七・八%であり、強制性交等の起訴率は三二・七%でございます。
○辰巳孝太郎君 それでは、内閣府の二〇一七年度男女間における暴力に関する調査の中で、無理やり性交等をされた経験がある人の割合はどうですか。
○政府参考人(渡邉清君) 先生御指摘の調査でございますけれども、二十歳以上の男女三千三百七十六人の有効回答数を得て調査したもので、これまで無理やりに性交等をされた経験があるかという質問をしておりますが、無理やり性交等された経験のある、被害経験のある人は百六十四人、四・九%。うち女性だけで見ますと、回答数千八百七人中百四十一人が被害経験があり、七・八%という数字になってございます。
○辰巳孝太郎君 つまり、女性では十三人に一人、男性では六十七人に一人に被害体験があります。被害を受けた方の大半が女性ですが、この数値から、性暴力救援センター大阪、SACHICOの加藤医師は、一年間に六万人から七万人の女性が被害に遭っていると試算をしています。大変な人数です。この試算と先ほどの認知数などの差が大きいわけですね。
同じ調査で、女性が被害を誰に相談したのかという結果の概要を教えてください。
○政府参考人(渡邉清君) 調査の中で、被害経験のある女性の約六割は誰にも相談しておらずということが浮き彫りになりました。また、仮に相談しても、公的な機関というよりは、知人の方、友達とか親とか、そういう公的な相談機関でないところというのが多かったというような結果になってございます。
○辰巳孝太郎君 誰にも相談できない人が六割、警察に相談した人は三%以下なんですね。被害を抱え込んで一人で何とかしようとしている人がこれだけたくさんいる。片山大臣、この結果、どう受け止めますか。
○国務大臣(片山さつき君) そもそも、この女性に対する暴力の中でも、この性犯罪、性暴力は女性の人権を著しく踏みにじる決して許されない行為でございます。
先ほどの調査ですが、確かに被害経験ある女性の六割はどなたにも相談していないですし、また一番相談された方は本当に身内だったり家族だったりで、警察そのほか第三者機関は少ないというのは非常に我々重く受け止めております。
もう抱え込んで悩んでいる状況というのは、非常にこれは何とか改善をしていきたいという思いでございまして、全ての都道府県に産婦人科医療、相談、カウンセリング等の心理的支援、法的支援を可能な限り一か所で提供するワンストップ支援センターを委員の皆様の御意見もいろいろといただきました上で設置をして、被害者がちゅうちょせずに相談しやすい環境づくりを進め始めているという、こういう状況にはございます。
三十一年度予算案でも、本当に、御指摘をいただく部分は足りないと思われるかもしれませんが、少しずつですね、少しずつ努力して、新たに医師や看護師等への専門研修、あるいはSNS等の先進ツールの活用、それに加えて、センターの運営の三百六十五日二十四時間化等におきまして相談体制を拡充し、そういうことを予算の方でお願いをしておりまして、関係省庁とも緊密に連携して、何とか被害者の方々の心に寄り添うということに万全を尽くしてまいりたいと考えております。
○辰巳孝太郎君 意を決して相談しても、加害者の違法を認めさせられない、泣き寝入りせざるを得ない状況があります。
資料に付けました。今月、二つの無罪判決が地裁で出ました。福岡地裁久留米支部、二〇一九年三月十二日判決書き一ページ十六行目から十九行目、五ページ五行目、Xはから十九行目末尾まで、十一ページ七行目、Xがから十行目。もう一つが静岡地裁浜松支部の強制性交等被害事件の無罪判決、二〇一九年三月十九日、第一、公訴事実及び争点の一行目、本件公訴事実はから十二行目、第三、結論の一行目、被告人が口腔性交する際から四行目の末尾までを読んでください。
○最高裁判所長官代理者(安東章君) それでは、委員御指定の部分を読み上げます。
まず、久留米支部の判決でございますが、一ページの十六行目から十九行目まででございます。
本件公訴事実は、被告人は、平成二十九年二月五日、福岡市所在の飲食店店内において、当時二十二歳、以下Xというが、飲酒酩酊のため抗拒不能であるのに乗じ、同人を姦淫したというものである。
続きまして、五ページ五行目から十九行目まででございます。若干長くなりますけど、読みます。
Xは、①二月四日午後十一時頃から本件飲み会に参加したところ、同月五日午前四時十五分頃までの数時間の間に、ショットグラスに入ったテキーラ(なお、関係証拠によればアルコール度数は四〇%程度と認められる)の一気飲みを数回させられるなど、多量のアルコールを短時間のうちに摂取していたこと、②同日午前四時十五分頃までに、カウンター席で眠り込み、眠ったまま嘔吐しても目を覚まさないような状態であったこと、③嘔吐後、店内にいた他の者に運ばれてソファーフロアに移動させられたところ、周囲の問いかけには応じるものの、再び眠るような状態であったこと、④同日午前四時二十二分頃までに、ソファーの上で、スカートがまくれ上がり、はいていたストッキングやパンツが見える状態で眠り込んでいた上、その様子を写真撮影されても気付かなかったこと、⑤同日午前五時四十一分頃までに、ソファーの上で、スカートの下にストッキングやパンツをはかずに横になり、添い寝する被告人から抱き付かれ、スカートの内側に手を入れて体を触れられていた上、その様子を写真撮影されても気付かなかったこと、⑥その後、被告人から陰茎を挿入されたこと。
それから、続きまして、十一ページ七行目から十行目まででございます。
Xが本件性交時において抗拒不能の状態にあったとは認められるが、被告人がそのことを認識していたと認めることができないから、本件公訴事実については犯罪の証明がない。よって、刑事訴訟法三百三十六条により、被告人に対して無罪の言渡しをする。
委員御指摘の二件目の判決、静岡地裁浜松支部のものでございます。
第一の本件公訴事実はのところから十二行でございます。性的な表現も含まれておりますが、原文のまま読み上げます。
本件公訴事実は、被告人は強制的にA、当時二十五歳と性交等をしようと考え、平成三十年九月八日午前二時頃、静岡県磐田市所在のファミリーマート南側駐車場において、徒歩で通行中の同人に対しあっちに行こうなどと声を掛け、同人の背中に手を回すなどして同人を同市所在の店舗西側敷地内に連行し、その頃から同日午前二時十五分頃までの間、同所において同人の体を両腕で抱きかかえて持ち上げ、同所に設置されていたウッドデッキに座った自己の体の上にあおむけに横たわらせるなどし、同人の膣内に指を入れて弄び、同人の着衣をまくり上げて同人の乳首をなめるなどした上、同人を前記ウッドデッキの上に座らせ、同人の顎付近を手でつかみ同人の口に指を入れて強引に開くなどの暴行を加え、同人の反抗を著しく困難にして同人の口腔内に自己の陰茎を入れ、もって暴行を用いて口腔性交し、その際、同人に加療約二週間を要する口唇挫創、顎関節捻挫等の傷害を負わせたというものである。
それから、最後に、同判決第三、結論の一行目から四行目まででございます。
被告人が、口腔性交をする際、被告人が加えた暴行がAの反抗を著しく困難にする程度のものであったことを基礎付ける事情を認識していたと認めるには合理的な疑いが残り、被告人にはこの点に関する故意が認められない。
以上でございます。
○辰巳孝太郎君 どちらも事実として被害者は抵抗できなくなっていたということは認められているんですね。
それでは、二〇一六年一月の最高裁で、準強姦被告の事件、無罪が確定した判決、判決理由欄の第一、本件公訴事実の部分を読み上げてください。
○最高裁判所長官代理者(安東章君) 委員御指摘の福岡高裁宮崎支部の無罪判決の部分でよろしいですね。
福岡高裁宮崎支部の準強姦被告事件の無罪判決の第一の本件公訴事実の部分を読み上げます。若干長くなりますが、原文を読みます。
被告人は、自ら主宰する少年ゴルフ教室の生徒である被害者、当時十八歳が、両者の間に存在する厳しい師弟関係から被告人に従順であり、かつ被告人を恩師として尊敬し同女に対し劣情を抱いて卑わいな行為をするはずがないと信用していることに乗じ、ゴルフ指導の一環との口実で同女をホテルに連れ込み姦淫することを企て、平成十八年十二月九日午後二時三十分頃、鹿児島市リゾートホテルに同女を車で連行した上、同ホテル駐車場において、同女に対し、度胸がないからいけないんだ、こういうところに来て度胸を付けないといけないなどと言葉巧みに申し向けて同女を同ホテルの一室に連れ込み、同所において、同女に対し、おまえは度胸がない、だからゴルフが伸びないんだ、俺とエッチをしたらおまえのゴルフは変わるなどとゴルフの指導にかけつけて被告人と性交するよう申し向け、さらに同女をベッド上であおむけに倒して覆いかぶさった上、強引に接吻するなどし、同日午後三時頃、恩師として信頼していた被告人の上記一連の言動に……(発言する者あり)強い衝撃を受けて極度に畏怖、困惑し、思考が混乱して抗拒不能の状態に陥っている同女を、その旨認識しながら姦淫し、もって同女を抗拒不能にさせて姦淫した。
以上でございます。
○辰巳孝太郎君 これですけれども、資料にも付けましたが、被告人が被害者の抗拒不能状態を認識していたか否かについても問われまして、これを認識していなかったということになっているわけです。
なぜこういう事件が無罪になるのか。最大の問題は、被害者の同意、不同意を暴行、脅迫の有無に限定してしまっている今の刑法にあるわけですね。レイプには、強制性交等罪、準強制性交等罪が適用されますが、どのようなものか、これ紹介してください。
○政府参考人(小山太士君) 刑法百七十七条の強制性交等罪の要件は、十三歳以上の者に対し暴行又は脅迫を用いて性交等をすることであり、刑法百七十八条二項の準強制性交等罪の要件は、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ若しくは抗拒不能にさせて性交等をすることでございます。
○辰巳孝太郎君 強制性交等は、反抗を著しく困難とする程度の暴行、脅迫を用いて性交し、それを認識していたか、準強制性交等は、心神喪失、抗拒不能であることを認識し性交したかが問われます。激しく抵抗できなければ暴行、脅迫要件が適用されず、そして途切れ途切れに抵抗すると心神喪失も抗拒不能も認められない。じゃ、被害者どうすればよかったのか。
例えば、拒否の意思を示しており、相手の同意がないのは明らかなのに、現在の法律ではレイプとされないことがある。同意がないから殴るんじゃないのか。そもそも、性交などを行うときに相手の意思や心情を尊重するのは当然のことだと私は思います。むしろ確認することもなかったということが非難されるべきではないのか。
二〇〇九年、国連は、女性に対する暴力に関する立法ハンドブックを作成しました。そこでは、明確で自発的な合意がない限り犯罪が成立することとし、その立証に当たっては、加害者に対し被害者から同意を得たか否かを確認するための段階を踏んだことの証明を求めるべきであるとしています。
大臣、そもそもこういう暴行、脅迫要件は撤廃されるべきなんじゃないですか。
○国務大臣(山下貴司君) お答えいたします。
お答えする前提として、先ほどるる読み上げられた個別案件とは全く無関係にこれは答弁をさせていただきたい。というのは、個別案件に関して、個別の事実認定に関して法務大臣がコメントするということはこれは適当ではないと考えますので、先ほどるる読み上げられたものとは異なるというところで、一般論として私は答弁させていただきます。
その上で答弁をさせていただきますと、平成二十九年の刑法改正においては、暴行、脅迫の要件を一般的に撤廃することについて、以下、これから述べるような問題があり、慎重な検討を要するものと考えられ、改正が行われなかったところでございます。
すなわち、これは、暴行、脅迫というのは、これは外形的行為ということでございますが、そういった外形的行為がないときには被害者の不同意を証明するのが容易でない上、性交に応じるか否かという内心の立証や認定は難しいという指摘。実務上、具体的事案に応じて、被害者の年齢、精神状態、行為の場所、時間などの様々な事情を考慮して暴行、脅迫の要件が認められており、暴行、脅迫の要件のみが障害となって処罰されていないという状況にあるということについては、これは一概には言い難いということでございます。
ということで、適切な検討のために、他方で刑法一部改正法の附則においては、広く性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方に関する検討が求められておって、現時点で検討の対象として具体的にどのような施策を取り上げるのかについて確たることを申し上げることはできませんが、適切な検討を行うことができるよう、まずは性犯罪被害の実情の把握等を着実に進めてまいりたいと考えております。
○辰巳孝太郎君 同意していない性交は性的自己決定権が侵害されているということであるのに、どうして同意そのものが問われないのかということだったと思うんです。
ドイツでのレイプ罪、二〇一六年の法改正、イギリスでの規定の紹介をしていただけますか。
○政府参考人(小山太士君) 諸外国の法制度を網羅的に把握しているものではございませんが、承知している範囲でお答えを申し上げます。
ドイツにつきましては、刑法百七十七条一項において、他の者の認識可能な意思に反して、この者に対して性的行為を行うなどした者につき、六月以上五年以下の自由刑に処することとされています。そして、行為者が被害者に対して暴行、脅迫を用いた場合等には一年以上の自由刑を言い渡すものとされ、これらの処罰規定は性的行為を対象とするものでございますが、犯情の特に重い事案では二年以上の自由刑を言い渡すものとされ、犯情の特に重い事案とは、行為者が被害者と性交をしたとき等であるとされております。
続きまして、イギリスにつきましては、二〇〇三年、性犯罪法一条において、人が男性器を他人の女性器等に故意に挿入したこと、その他人が挿入に同意していなかったこと、かつ行為者は他人が同意していると合理的に信じていないことという要件を満たす場合にはレイプの罪が成立し、最高で終身刑に処せられることとされております。
○辰巳孝太郎君 今日、資料にも付けましたけれども、欧米は同意のない性行為が罪というのがスタンダードになってきているんですね。
さて、レイプの構成要件たる暴行、脅迫の認定に、警察、検察、裁判官の性別に対する偏見、ジェンダーバイアスが影響していると言われてきました。ジェンダーバイアスとは一体何ですか。
○政府参考人(小山太士君) お尋ねのジェンダーバイアスとは、一般に、社会的、文化的に形成された性別に基づくゆがみ、偏見を意味するものとされていると承知しており、女性を被害者とする性犯罪事件におけるジェンダーバイアスの問題としては、例えば、女性は被害に直面した際に激しく抵抗するはずであるといった考えにとらわれる、女性の過去の性的プライバシーを当該犯行時の同意の根拠とするなどといった指摘がなされているものと承知しております。
○辰巳孝太郎君 二〇一七年の刑法改正の過程でも議論となりまして、衆参で附帯決議にも反映されました。附帯決議の二を読んでいただけますか。
○政府参考人(小山太士君) 御指摘の附帯決議におきましては、「刑法第百七十六条及び第百七十七条における「暴行又は脅迫」並びに刑法第百七十八条における「抗拒不能」の認定について、被害者と相手方との関係性や被害者の心理をより一層適切に踏まえてなされる必要があるとの指摘がなされていることに鑑み、これらに関連する心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進するとともに、これらの知見を踏まえ、司法警察職員、検察官及び裁判官に対して、性犯罪に直面した被害者の心理等についての研修を行うこと。」とされております。
○辰巳孝太郎君 その附帯決議を受けた調査研究結果、これを紹介していただけますか。
○政府参考人(西山卓爾君) 先ほど答弁がございました附帯決議二項を受けまして、法務総合研究所では、精神科医等の指導、助言を受けつつ、文献、事例等を収集、分析するなどの法務研究を実施してきたところでございます。
本研究については、中間報告として先般その概要を公表したところでございます。そのうち性犯罪被害者の心理や行動に関する調査研究について御説明を申し上げます。
まず、性犯罪被害者が示す反応や行動には様々なものがあり、必ずしも強い抵抗を示すわけではなく、身体的抵抗より言葉による抵抗が多い傾向が見られ、全く抵抗していない者が相当数いることが分かりました。
こうした性犯罪被害者の反応や行動の原因や機序について文献を調査いたしましたところ、例えば、被害の最中又は直後において解離、すなわち、非現実感、身体からの離脱体験、感覚、感情の麻痺等が見られたり、被害に直面する前の心理やリスク認知に関しては、予測される脅威やその危険性について最小限に評価しようとする正常バイアス等が働くことが指摘されております。
また、継続的な被害にさらされた者の心理等に関しましては、解離のほか、性的虐待の被害児童に見られます性的虐待順応症候群、それから学習性無力感などが指摘されております。さらに、被害後の精神症状として、性犯罪被害者における心的外傷後ストレス症候群、いわゆるPTSDの発症率が特に高いとされ、PTSDの診断基準を満たさない場合も解離等が生じていることがあるというふうに指摘されております。
○辰巳孝太郎君 そういう新たな研究、知見というのがされているわけなんですが、被害者の訴えをまず聞くのが警察であります。このジェンダーバイアス排除のために警察はどのような取組をしているか、紹介ください。
○国務大臣(山本順三君) お答えをいたします。
警察は、性犯罪被害者が最初に相談をする公的機関となることも多く、被害者の心理を理解して対応することが重要である、このようなことでございますので、これまでも警察学校等で職員に対する必要な研修を行ってきたところでございます。
警察におきましては、平成二十九年の刑法改正、それから今の附帯決議、これを踏まえて、警察大学校での研修や全国の都道府県警察の性犯罪捜査担当者を集めた会議において、臨床心理士や精神科医等を講師として招き、講義を実施しているところでございますし、また各都道府県警におきましては、警察学校や警察署等において性犯罪者被害者の、性犯罪者被害者の心理に関する研修を実施しておりまして、性犯罪に直面した被害者の心理等について職員の理解を深めるための研修を実施しているものでございまして、今後とも、引き続き被害者の心情に配慮した適切な対応が徹底されるよう、警察を指導してまいりたいと思っております。
○辰巳孝太郎君 次に検察です。検察は、被害者の言動により嫌疑不十分と判断して裁判にならないケースもあります。取組を教えてください。
○国務大臣(山下貴司君) 法務・検察では、経験年数等に応じた検察官に対する各種研修を行っております。そして、それらの研修においては、これまでも検察官が性犯罪の被害者の心理等をより適切に踏まえた事実認定ができるよう、性犯罪に直面した被害者の心理に精通した臨床心理士や精神科医による講義などを実施しているところであります。
また、昨年七月には、全ての地検の担当検事が参加した検事会同において、精神科医による性犯罪被害者の心理等に関する講演が行われ、その内容については会同参加者を通じて様々な機会において各地検に周知されているところであります。さらに、各地検や高検においても、各庁の実情に応じて性犯罪に直面した被害者の心理に関する勉強会や講義などを実施するなどしているものと承知しております。
今後も、平成二十九年六月に成立した刑法の一部を改正する法律における附帯決議の趣旨も踏まえ、各種研修において法務、先ほど紹介ありました法務研究の内容を十分に活用するなどして、性犯罪被害者の心理等に関する理解を深める取組を行ってまいりたいと考えています。
○辰巳孝太郎君 最後に裁判官です。取組を教えていただけませんか。
○最高裁判所長官代理者(安東章君) お答え申し上げます。
裁判所といたしましても、性犯罪に直面した被害者の心理等の適切な理解は裁判官にとって重要と考えておりまして、これまでも性犯罪の被害者の心理に詳しい精神科医等を講師とした研修を実施しているところですが、先ほど言及のございました附帯決議の趣旨も踏まえまして、平成二十九年十月には、裁判官を対象とした司法研修所の研究会において、性犯罪被害者の支援に長年携わっておられます臨床心理士の先生を講師として、被害時の被害者の心理状態やその後の心理状態等について理解を深める講演と意見交換を行いました。
また、研究会に参加しなかった裁判官に対してもこの研修の内容を伝えるために、こうした講演の内容や意見交換の結果等については、取りまとめました冊子を作成して、執務資料として全国の裁判所に配付しております。
さらに、各高等裁判所におきましても、性犯罪被害者やその支援者の方などを講師としまして、被害者の心情等について理解を深めることなどを目的とした研究会を開催しておるところでございます。
裁判所としましては、今後とも、以上のような研修などを通じまして、性犯罪に直面した被害者の心理等の適切な理解に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○辰巳孝太郎君 研修したと言うんですけれども、参加人数は四十人なんですよ、裁判官。冊子を配ったと言いますけれども、これ、全体でいうと三人から四人に一冊しか配られていないんですね。
私、改めて提案したいんですけど、これ全ての裁判官に届けて、研修を是非全員に受けてもらうように検討していただけませんか。
○最高裁判所長官代理者(安東章君) お答え申し上げます。
先ほども申し上げましたとおり、委員御指摘の執務資料につきましては、全国の性犯罪などの刑事事件を担当する裁判官の執務室などに備え置きまして、いつでも裁判官が参照できたり、あるいは裁判官同士で議論する際の素材としてもらうこととしております。このため、研修に参加しなかった刑事事件担当の裁判官だけでなく、今後異動などによって新たに刑事事件を担当することになる裁判官につきましても、執務資料に目を通し、これを素材として議論するなどして研修の内容等が共有されていくものと承知しておるところでございます。
裁判所としましては、適切な研修を実施することは当然でございますが、このような研修内容の共有あるいは裁判官同士の議論を繰り返していくことによりましても専門的な知見等についての裁判官の理解を深めていきたいと、そのように考えております。
○辰巳孝太郎君 やはり起訴するにも、これが犯罪として立証されるかどうか、検察というのはやっぱり裁判官の認識がどうなのかということもあるというふうに言われていますので、是非全員に研修をしてもらえるよう提案したいと思うんです。
内閣府は、全国に性暴力被害者救援センターを整備し、なるべく多くの被害者に相談してもらえるよう取り組んでいます。このワンストップセンターの整備状況を教えてください。
○政府参考人(渡邉清君) ワンストップ支援センターは、被害直後から産婦人科医療、相談、カウンセリング等の心理的支援、法的支援などを可能な限り一か所で提供することにより、被害者の心身の負担を軽減し、その健康の回復を図ることを目的とするものでございます。
このワンストップ支援センターを平成三十二年度までに各都道府県に最低一か所設置するという目標につきましては、平成三十年十月、昨年に前倒しして実施、実現をしたところでございます。
以上です。
○辰巳孝太郎君 来年度の予算で、ワンストップセンターに係る予算が概算要求から大きく削られました。二十四時間化を推進するための職員の人件費、夜勤をする医師への謝金の部分が認められなかったと聞いております。
夜にも被害は起きます。レイプが多く発生する時間帯はいかがですか。
○政府参考人(露木康浩君) お答えいたします。
平成三十年中に認知した強制性交等事件につきまして、発生時間帯がはっきりしている五百三十七件について見ますと、日中、夜間を問わず発生をいたしておりますけれども、二時間刻みで見ますと、午前零時から午前二時が最も多く九十二件、次いで午前二時から午前四時が六十八件、午後二十二時から午後二十四時までが六十六件となってございます。
また、平成三十年中に発生いたしました強制わいせつ事件について、発生時間帯がはっきりしているもの四千三百二十八件について見ますと、こちらも日中、夜間を問わず発生しておりますけれども、二十二時から二十四時が最も多く六百八十八件、次いで午前零時から午前二時が六百八十七件、午後二十時から二十二時が六百四件となってございます。
○辰巳孝太郎君 夜間多いんですね。
被害を受けた方が二十四時間すぐに相談でき、医療を受けられる体制整えるのは国の当然の責任です。予算を付けていくのが当たり前だと思うんですが、財務大臣の見解をお聞かせください。
○国務大臣(麻生太郎君) 今お話のありました話はワンストップ支援センターの話だと思いますが、性犯罪・性暴力被害者支援交付金の交付で各地方公共団体にいろいろな取組を支援させていただいているんですが、支援センターの運営費、被害者の方々の病院での検査費用、緊急避妊措置の医療費等々について支援を行っておるんですが、御指摘のありました平成三十一年度の予算においては、二十四時間三百六十五日運営する支援センターの拡充、十六か所から二十四か所に増えております。
拠点となります病院の整備、質の向上、十一か所から十五か所と進める経費を含みまして、対前年比一二%増となります二・一億円を計上させていただいておりますので、これまでも平成二十九年度一億六千三百万、平成三十年一億八千六百万、平成三十一年二億九百万等々、確実に増やしてきておりますし、また最低一か所、各都道府県でいわゆる達成をせねばならぬという話でスタート、目標を設定してやらせていただきましたけど、平成三十年度中にこの点は達成をしておると思っておりますので、四十七都道府県で今それが全部でき上がることになったという状況になろうと理解しております。
○辰巳孝太郎君 二十四時間、十六か所から二十四か所という話ありましたけど、元々三十六か所の要求なんですよ。要するに、削られているんです。増額したと言うけど、やっぱりこれもう僅かですからね。
結局、こういうところの予算を渋ってしまうというのは私は納得できません。予算が足らないのであれば、これは国の責任で無駄なところを削ってここに充てていくというのが当然だと言いたいと思います。
この性暴力被害者支援交付金には医療費の支援も含まれております。これ、イエスかノーかだけで。
○政府参考人(渡邉清君) 医療費の交付も含まれております。
○辰巳孝太郎君 ところが、これ大阪府は申請していないんです。理由を教えてください。
○政府参考人(渡邉清君) 大阪府の関係ですけれども、大阪府に伺ったところ、ワンストップセンターの方に相談しました被害者に係る医療費を予算化していない理由としては、性犯罪の潜在化を防止し再被害を防ぐために警察への相談、届出を推奨しており、本交付金で医療費を活用するよりも警察の医療費公費負担制度を活用しているためだというふうに聞いております。
一方で、やむを得ない事情で警察への相談をちゅうちょされる方もいらっしゃいますので、そうした被害者への対応につきまして、今後、大阪府とセンターの運営団体との間で協議していく予定と伺っております。
以上でございます。
○辰巳孝太郎君 だから、ワンストップセンターに行かずに警察に行けと、じゃないと医療費を支援できないよということなんですよ。警察に行けない人が多いからセンターを整備するわけでしょう。あり得ない理由なんです。
大阪のSACHICOですね、先ほどありました、これ病院拠点型の先駆ですよ。ここに医療費が支援されないという大問題が起こっておるわけなんです。私、大阪府に話聞きましたら、これ今ありましたとおり、どこまでを被害者と取るのかSACHICOと折り合わないんだと、広く取って国や会計検査院に何か言われたらどうするのかと大阪府が言っているわけなんですよ。
確認しますけど、この医療費の支援の対象はどのように定められていますか。
○政府参考人(渡邉清君) 交付金の交付要綱におきましては、当該都道府県の相談センターに相談した被害者であって、やむを得ない事情により警察に相談することができなかったことによって都道府県警察による医療費及びカウンセリング費用の公費負担制度が適用されない被害者というふうになってございます。
○辰巳孝太郎君 ですから、非常に幅のある規定なんです。被害に遭った人を広く救うためにはこれ当然のことなんですよ。産科医始めスタッフが支援すべきだと判断をした被害者を国の判断で対象外とするのかと。どういう人を被害者とするのか、これ国が細かく定めているんですか。これ、どうですか。
○政府参考人(渡邉清君) 交付要綱で定めておる内容につきましては、先ほど申し上げたとおりにとどまってございます。
○辰巳孝太郎君 つまり、自治体の裁量でどの方を被害者とまで含めるかというのは決めるということですよね。
○政府参考人(渡邉清君) 基本ですね、ワンストップセンターの交付金の申請に当たっては、各都道府県、センターの方の御意向に沿った形で申請いただいて、それをこちらの方でお認めするという形を取ってございます。
○辰巳孝太郎君 ですから、自治体のやる気次第なんですよ。とはいえ、国の交付金、これ予算が、先ほどありました、少なく、それに合わせて自治体の予算も少なくなってしまっているというのが現実です。被害に遭った人のケアを迅速に進められるようにすることは国の責務です。
この予算の大幅増額を求めて、私の質問を終わります。