自動車保有広く認めよ/辰巳氏 生活保護利用巡り/衆院厚労委 ①
(10日の速記録と動画を掲載)
生活保護制度は、生活保護利用者の自動車保有を原則認めず、保有している人は自動車の処分を迫られます。障害者や公共交通機関の利用が困難な地域に住む人が通勤や通院などで利用する場合に限って、例外的に保有が認められていただけでした。
しかし、当事者の訴訟や国民の運動に押された厚生労働省は2024年12月、保有を認めた自動車を「日常生活に不可欠な買い物等」で利用することを認める通知を出しました。日本共産党の辰巳孝太郎議員は国会で、依然厳しい制限をさらに緩和し、自動車の使用を広く認めるよう要求しました。
辰巳氏は10日の衆院厚労委員会で、通知は通勤や通院などの目的で自動車の利用を認められている人に対して新たに追加で認める用途として「日常生活に不可欠な買い物等」と記載しているだけだが、「子どもの学校行事や塾、習いごとの送り迎え、郊外のショッピングモールに車で行くことも可能か」と質問。厚労省の鹿沼均社会・援護局長は「指摘の用途に使用することも認められる」と明言しました。辰巳氏は「地方によっては車なしで生活できないのは、一般世帯も生活保護世帯も同じだ」と強調。広く制限を緩和し、日常生活自立や社会的自立を助ける運用へと改善するよう求めました。
辰巳氏は12日の同委で、自動車処分の要件が、ひとり親世帯の生活保護申請権を侵害している問題を告発。NPO法人ひとり親家庭サポート団体全国協議会の調査によれば、福祉事務所に行ったにもかかわらず生活保護の申請をあきらめた理由で最も多いのが「生活保護を利用すると車の保有ができないと説明されたから」(約49%)だと指摘。公共交通機関が縮小するなか、「車の保有が認められないと、生活が脅かされ、社会との断絶を余儀なくされる」と訴えました。
さらに、自動車普及率が高い都道府県ほど母子世帯の生活保護利用率が低い実態をグラフで示し、自動車保有制限の撤廃を要求。鹿沼局長は「慎重な検討が必要だ」と背を向けました。
辰巳氏は「少なくとも公共交通機関の利用が著しく制限された地域のひとり親世帯であれば、自動車の保有を原則認めるべきだ」と重ねて求めました。
○辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
今日は、生活保護世帯の自動車保有についての厚労省の考え方と運用についてただしていきたいと思います。
三重県鈴鹿市が、自動車の利用を同居する障害のある次男の通院用に限定するため、日々の走行距離や行き先を報告するようこの生活保護世帯に指示をして、それを拒否したことを理由に生活保護を停止した事件、これに対する争いについて、二〇二四年三月二十一日の津地裁は、判決で、補足性の観点からしても、原告らの日常生活に不可欠な買物等の必要な範囲について利用することは、むしろ原告らが自立した生活を送ることに資するものであり、本件車両をその範囲で利用することは非難されるべきものではないとして、市の対応を違法といたしました。
また、同年十月三十日の名古屋高裁の判決でも、むしろ、被控訴人らが自立した生活を送ることに資する面があったというべきであり、補足性の観点から見ても、被控訴人らが本件車両を上記範囲で利用することを厳格に制限する指導を行う必要性は低かったというべきであると、市の厳格な自動車利用制限が厳しく指弾される判決となりました。
そこで、厚労省は、二〇二四年十二月二十五日、一定の留保をつけた上で、通勤や通院等のために保有が認められた自動車の他用途への利用を認めた事務連絡を発出いたしました。中身を紹介してください。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
生活保護制度は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが要件とされておりまして、まず原則として自動車の保有は認めていないところではありますが、障害者や公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者が通勤、通院、通所又は通学のために自動車を保有、必要とする場合などであって、一定の要件を満たす場合には、例外的にその保有を認めているところでございます。
生活保護制度において、通勤、通院等のために例外的に自動車の保有が認められた場合における他用途への利用については、令和六年十二月に自治体向けに事務連絡を発出し、日常生活に不可欠な買物等についても自動車を利用できるよう、取扱いを明確化したところでございます。
具体的には、日常生活に不可欠な買物等の判断に当たって、最低生活を保障する生活保護制度の運用として、遊興のために度々使用することは望ましくないと整理しておりますが、それ以外については、障害のある方については、その障害による支障を勘案し、原則として利用を認めるとともに、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者等については、地域の交通事情等を考慮して、低所得世帯との均衡を失しないと保護の実施機関が認める場合に、利用を認める取扱いとしているところであります。
○辰巳委員 一定緩和されたということで、この判決や、あるいは運動団体、あるいは国会の様々な論戦などの一つの成果、到達点ではあると思うんです。
同時に、今日、資料にもこの事務連絡をつけておりますけれども、懸念されるのは、この事務連絡において、日常生活に不可欠な買物等に自動車を利用する場合において、地域の交通事情や世帯の状況等を勘案して、低所得者世帯との均衡を失しないという文言がありまして、これを制限的に解釈をして運用されてしまう、これが懸念されることなんですね。
しかし、そもそも、自動車の利用を認めるケースにおいては、公共交通機関の利用が著しく困難な地域で認められているわけなので、そのような地域は、生活保護利用者であろうが一般の低所得者世帯であろうが、日常のあらゆる場面で自動車が必要になってくると思うんですね。
したがって、これは制限的な運用には私はなり得ないと思うんですが、大臣、今回のこの事務連絡の趣旨というのは、制限的ではなくて、他利用も含めて、他用途を広く認めていくということでよろしいでしょうか。
○上野国務大臣 扱いにつきましては、今し方局長の方から答弁をしたとおりでございますが、その趣旨について申し上げれば、遊興のために度々使用することを容認するものではないのは当然でありますが、それ以外の用途として、日常生活に不可欠な買物等に自動車を使用する場合については、その用途の範囲を一概に制限するものではなく、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する方等の実際の支障を踏まえ、一般の低所得世帯との均衡を失しない範囲内で利用を認めるという趣旨でございます。
こうした趣旨を踏まえつつ、地域の交通事情や個々の世帯等の状況を勘案して、保護の実施機関において適切に判断していくことが必要だと考えています。
○辰巳委員 ということなんですね。
この事務連絡には、保有が認められた自動車の他用途への利用について、日常生活に不可欠な買物等としか書かれていないわけなんですね。
ここで厚労省に確認をしたいと思いますけれども、例えば、子供の学校行事、あるいは塾や習い事の送り迎えなどで使用することも可能でしょうか。あるいは、郊外でいうと、何とかモールとかありますよね。子供を連れていけば、かなり子供も喜んで遊んだりもするんですけれども、こういうショッピングモールに車を利用することも可能という理解でよろしいでしょうか。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、遊興のために度々使用することを容認するものではないことではありますが、生活保護受給者が通勤や通院等のために保有を認められた自動車について、一定の要件を満たしている場合には、日常生活に不可欠な買物等として、御指摘のような用途に使用することも認められるものというふうに考えております。
いずれにしても、保護の実施機関において、地域の交通事情や個々の世帯等の状況を勘案して、適切に判断していくことが必要だというふうに考えております。
○辰巳委員 一応念のために、先ほど来、遊興のためには駄目だよという話がありますので、この遊興とは何なのかということも一応念のため確認しておきたいと思うんですけれども、要するに、最低生活が維持できないような、ギャンブル施設とか、そういうものの類いだということでよろしいですね。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
先ほど先生がおっしゃったときに、ショッピングモールという例をお出しになられたときに、子供を遊ばせてという話があったので、例えばゲームセンターとかいろいろあると思いますけれども、そういったことをおっしゃられているのか。それとも、ショッピングモールで普通にお買物をするときというのはございますので、買物をするついでというとあれですけれども、そういった買物のために使われるということであれば多分違うだろうということでお話をさせていただいたものでございますので、遊興というのはそういったものだというふうに思っております。競馬とかそういったことだけではないというふうに思っております。(辰巳委員「だけではない」と呼ぶ)
繰り返しますが、競馬とかだけではなく、例えば先ほど言ったゲームセンターとか、そういったものを度々利用するということについてはどうなのかということだと思っております。
○辰巳委員 それはどうなんですか。それはどうなのかというのを確認したいと思います。
ショッピングモールの中には、もちろん、ショッピングモールですから、買物施設なんですね。同時に、小さいお子さんがちょっと遊ぶようなところで遊ばせながらショッピングするということも、普通の世帯ではあり得ることだと思うんですよ。これは大丈夫ということでよろしいですね。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
個々の事情の話でありますけれども、例えば、買物をしてついでにということであれば、それは基本的には買物がメインだというふうに思っておりますが、買物ではなくて、例えば、ゲームをしに行くことがメインでほかのことは何もしない、それを度々ということであれば、これは一般的に言えば遊興ということに当たるのではないかというふうに思っております。
○辰巳委員 分かりました。ある程度明確になったのかなとは思います。
もう一点、ちょっと改善が必要な点があるんですね。
当事務連絡において、事業用の自動車について一番下に書いてありますね。これは事業用以外の利用については認めませんよということになっているんですね。ただ、これは、この度の事務連絡の趣旨から考えても、ちょっと合理的な運用ではないんじゃないかというふうに思います。
事業用で認められた自動車の保有についても、事業以外の日常的な買物など、他用途への利用も認めていくべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
繰り返しになりますが、生活保護制度においては、原則として自動車の保有は認めていないところでございますが、一方で、今先生からお話のありました事業用自動車につきましては、その業種や地理的条件等から判断して、当該地域の低所得世帯との均衡を失しない範囲で、現に最低生活維持のために利用しているか、おおむね一年以内に世帯の収入増加に著しく貢献する場合に例外的に保有を認めており、原則として、保有が認められた事業以外の利用は認められないこととしているところであります。
こうした取扱いについては、事業用自動車が事業を営むために直接必要となるもので、その事業活動を通じて当該世帯の自立に果たす役割も含めて利用価値を判断していくこと等を踏まえたものでございますので、他用途への利用を通勤や通院等と同様に認めることについては、保有目的ですとか、自動車の保有が認められていない被保護者との公平性、こういったものとの関係で慎重に検討すべきではないかというふうに考えております。
○辰巳委員 いや、ちょっと厳しいですね。
つまり、今回緩和された内容も、通勤のために認められているんですよ、だけれども、通勤以外のためにも使っていいですよという緩和なんですよ。だったら、事業用で認められた車についても、事業以外でも認めるべきだと私は思いますよ。
もちろん、都市部で公共交通機関があるところではなくて、公共交通機関を利用することが著しく困難な、そういう地域で事業用で認められたところはやはり認めていくべきだと思うんですけれども、これはどうですか。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
先ほど答弁いたしましたのは、まさに事業用として認められているということだけでございますので、そこに先生今おっしゃられているような、公共交通機関が著しく困難であるとか、また障害者だとか、そういったことがあるのであれば、そちらはそれで、先ほど、冒頭申し上げたとおり、通勤とか通学等について認めているわけでございますので、そういったこととの関係で認めるという判断になろうかと思っています。
それは、事業用だけなのか、それとも公共交通機関が著しく困難な地域という、両方、ダブルでかかっているのか、そういったことによって判断は変わってくると思っております。
○辰巳委員 これは重要な答弁だと思うんですね。
事業用と認められたというのは、仮に、その地域が公共交通機関が著しく発達していない、ほかの世帯も大体車を利用しなければ日常生活が送れないというところについては、事業用で認められたとしても、事業以外にも使うという判断は実施機関によってあり得る、こういうことですね。うなずいていただきました。ありがとうございます。
これはやはり、様々な運動もあり、厚労省とのやり取りもあり、一定緩和をされてきたものではありますけれども、やはり、地方によっては、車なしでは生活できない。それは一般世帯であれ生活保護利用世帯であれ同じですから、これは広く、更に広く緩和をして、自立の助長に資していくという運用を引き続き求めていきたいというふうに思います。
以上です。