必要な生活保護利用へ/自動車保有制限が壁に/衆院厚労委 辰巳氏が調査要求
生活保護制度では原則として利用者の自動車保有を認めず、制度利用の壁となっています。このため「自動車普及率が高い都道府県ほど母子世帯の生活保護利用率が低い」という強い相関関係が指摘されています。日本共産党の辰巳孝太郎議員が6月26日の衆院厚生労働委員会で、この強い相関関係は厚労省のデータからも明らかだとして調査を求めたのに対し、上野賢一郎厚労相は「勉強したい」と述べ、自動車保有制限の見直しの必要性を事実上認めました。
辰巳氏は6月12日の同委で、都道府県ごとの世帯あたりの自動車保有台数と母子世帯の生活保護率との間には強い相関関係(決定係数0・74)が認められ、自動車保有が生活保護利用を阻む強烈な水際作戦として機能していると指摘。自動車保有を原則認めるよう求めました。これに対し厚労省は、辰巳氏とは別のデータを示し、高い相関関係はないなどと主張していました。
同26日の質疑で辰巳氏が、2014年の自動車普及率と15年の母子親家庭の生活保護利用率に基づく厚労省の分析(決定係数0・528)によっても高い相関性があると指摘すると、上野厚労相は「相関係数が高い」と認め、「もう少し勉強はさせていただきたい」と答えました。
また、厚労省は同12日の質疑で、自動車保有が少ない都市部では一人親が仕事を求めて流入するケースが多いため被保護率が高まる一方、地方は持ち家率が高いため被保護率が低いのではないかと答えていました。
辰巳氏が同26日の同委で、この答弁の根拠をただすと、上野厚労相は一般論や推論を述べたものだと説明。辰巳氏が示したデータを否定したものとは「捉えていない」と答えました。
辰巳氏は、提示したデータに対しまともな根拠を示さず一般論や推論を述べて反論したかのようにみせる答弁は不誠実だと批判しました。
○辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
まず、RSウイルス感染症に対する抗体製剤の費用、価格について確認をいたします。
増分費用対効果ですが、一小売当たり六百四十三万円と、一般的な基準である五百万円から六百万円を超える結果となっております。審議会の資料では、抗体製剤の価格は四万五千円、接種費用三千二百円とされ、合計五万円近くになることが想定をされております。費用対効果の面からは少し高いように思われます。ちなみに、母子免疫ワクチンは二万三千九百四十八円ですね。
この定期接種化に当たり、可能な限り少ない費用で望ましい効果を得る必要があります。手技料を含めて一小売当たり五百万円以下となるように、私はメーカーなどと交渉することなどが必要ではないかと思いますけれども、厚労省、いかがでしょうか。
○鷲見政府参考人 お答え申し上げます。
抗体製剤が定期接種化される場合の具体的な価格は、企業と自治体等の協議において決定されるためお示しすることは困難であるものの、昨年十月の審議会においては、製造販売業者からのヒアリングも踏まえ、ベイフォータスの価格を四万五千円とした費用対効果に基づく議論が行われ、制度上の論点に係る議論の経過を踏まえながら、必要に応じて費用対効果等について引き続き検討するとされたところでございます。
いずれにいたしましても、抗体製剤の定期接種化に当たっては、予防接種基本計画に基づき、費用対効果にも配慮しながら、審議会での議論を踏まえた価格を前提に、望ましい効果を得ることができるよう、透明性の確保や価格の適正化に向けて努めてまいりたいと考えております。
○辰巳委員 是非メーカーに交渉していただきたいと思いますね。
さて、六月十二日に質問をいたしました母子家庭の生活保護利用者、自動車保有についての続きをちょっとやりたいと思います。
自動車保有率が高い都道府県ほど、母子家庭の生活保護率が低いという相関データがあります。これは、自動車がより必要とされている地域では、原則、自動車を手放さなければならない生活保護行政の下で、申請をためらったりすることが要因となっているのではないかということであります。
この私の主張に対して、厚労省は、この種の数字は慎重に扱うべきだという言葉とともに、何点かの事例をもって反論のようなものをされたと思います。私は、これは是非議論をしたいと思うんですね。乗ってきていただきましたので、ありがたいと思うんですよ。
例えば、厚労省は、都市部では、一人親の方が仕事を見つけるために来られるというケースが多くなってきて、被保護率が高まると言いました。つまり、母子家庭の生活保護率が地方で低いのは、こういう事例が少ない、外から入ってくる事例が少ないということであって、自動車の普及率の問題ではないんですよということをおっしゃりたいんだと思います。
そこで、大臣にお伺いするんですが、都市部で母子家庭の生活保護率が高いのは他府県から流入してくる要素が大きいのだという根拠、それと、そのことが、私が示したデータの正当性をどの程度薄める、あるいは覆すものと考えているのかをお答えいただけますでしょうか。
○上野国務大臣 先般の局長の答弁ですけれども、これは、一般論といいますか、定性的に都市部の方が被保護率が高まるのではないかという推論を述べたものだというふうに承知をしておりますので、委員からお示しをいただいた車の関係について、それを何らかの形で否定をしたものだというふうには私は捉えておりません。
○辰巳委員 こちらとしてはデータを示しているんですけれども、あくまで一般論で、推論で反論する、こういうことだったと思います。ちょっと考えられない話ですね。
また、厚労省はこうもおっしゃいました。地方は持家率が高いので生活保護率が低いのではないか、こういう趣旨の主張なんですね。
大臣、その根拠と、そのことが私の示したデータの正当性をどの程度覆すと考えているのかをお示しいただけますか。
○上野国務大臣 これも、持家率が地方においては高いということを申し述べたものだと私としては承知をしておりまして、それと母子世帯の保護率について特段の関係性があるということを述べたものではないと承知をしております。
○辰巳委員 母子家庭の車のお話と、都道府県の車の保有率と、それが高い低い、母子家庭が都道府県によっては、つまり保有率が高い都道府県では生活保護の利用率が低くなるという議論の中で、あくまで一般的に示したまでだというのは、局長は、慎重に議論が必要だ、こう言いながら、私のデータに対して反論をしてきたわけですよ。しかし、今大臣の答弁にあったとおり、まともな根拠を示さずに、あたかもこちらが示したデータに反論したかのような答弁ぶりは、私は余りにも不誠実ではないかと思います。
ちなみに、公表されている都道府県別の持家率と自動車普及率を重回帰分析をした結果、自動車普及率の方が持家率よりも生活保護利用率の低下を説明するのに圧倒的優位となっていることも分かりました。つまり、何の反論にもなっていないということなんですね。
六月十二日に私が示した都道府県別の自動車保有台数と母子家庭の生活保護利用率は、強い相関が見られました。その決定係数は〇・七四だったんですね。これは、母子世帯の保護利用率の分布を自動車保有の状況で七四%が説明できるということなんです。非常に強い相関性なんですね。
これに対して厚労省は、答弁でこう言ったんです。母子世帯の保護率と、世帯当たりではなくて車の保有率というデータの相関を見ましたが、基本的にそのような高い相関はない。私のとは別のデータの存在に言及をして、私のデータへの反論を試みたわけですね。
厚労省の車の保有率データは二〇一四年のものですから、少々古いので、それが私はあることは分かっていたんですけれども、あえて使っておりませんでした。しかし、厚労省がそこまで言うのであれば、そのデータを用いて議論をしたいと思います。
統計学上は、決定係数はゼロから一の間の値を取ります。一に近いほどそのモデルの説明力が高いと言われております。決定係数の目安として、物理や化学の分野では〇・八や〇・九が当然なんですけれども、これら今議論している社会科学の分野では、〇・三や〇・四でも十分に高いと言われております。
さて、大臣、私への反論のために厚労省が示した二〇一四年の自動車普及率と二〇一五年の一人親家庭の生活保護利用率の相関関係において、その回帰曲線の決定係数は幾つでありましょうか。そして、その数値を大臣はいかように解釈しているのか、お答えください。
○上野国務大臣 まず、その決定係数につきましては、厚労省として分析をした数字によりますと〇・五二八だというふうにお伺いをしております。
どう評価をしているかなんですが、これは一般的に、今回委員から非常に貴重な御指摘をいただいていると思いますが、例えば、地方部においては、ざっくり地方と都市と分けた場合には、地方の方が車の保有台数が多い、あるいは一世帯当たりの保有台数が多いということを示しているのと、同時に、これは推論になりますが、地方の方が保護世帯が現れる、出現率といいますか、それが低いのではないかということを示しているのではないかというふうに考えます。
ただ、そうした決定係数というのがあるので相関があるのではないかという御指摘かと思いますが、ここで注意しなければいけないのは、相関係数が高いからといって、そこに因果関係があるかというのはまた別の話でありまして、よく統計の例で出ますけれども、一年間のアイスクリームの売上高と水難事故の件数、これは相関係数が高いと言われておりますが、アイスクリームと水難事故に因果関係があるとは言えないというふうに思います。
ですから、そういったことを考えますと、これをどういうふうに評価をするかということは、統計的な側面も含めて、まさに慎重に検討する必要があるということを前回局長も申し述べたのではないかと考えています。
○辰巳委員 大臣、貴重な意見という話をしていただいたんですけれども、アイスクリームと水難関係、それはそうでしょうねと誰だって思いますよ。
だったら、様々な変数を使って、私が示したデータに反論していただきたいと思いますよ。反論していただきたい。統計学上は、様々な変数を入れて、どの変数が信用に値するのかという重回帰分析だってできるわけですよ。やっていただきたいと思います。
ちなみに、私の方で、同じ時期の全体の保護率と二〇一四年の自動車普及率との相関を出しましたけれども、これは決定係数が〇・一五しかないんですね。つまり、非常に相関は低いと出ております。私のデータへの反論のつもりで出してきたデータだと思いますけれども、この母子家庭の変数の方が非常に十分に強い相関性があることが示されたというものであります。
大臣、そうおっしゃるんですけれども、このデータを、じゃ、実態と突き合わせてどうなのかという作業を厚労省はやらなければならないんですよ。アイスクリーム、海難事故、違うよね、それは分かりますよ。じゃ、私のデータがどうなのかと。
前回詳細に示したのが、NPO法人ひとり親家庭サポート団体全国協議会の千九百六十七人のアンケートですね。福祉事務所に行ったにもかかわらず生活保護の申請を諦めたという人の中で、一番多かった理由が、生活保護を利用すると車の保有ができないと説明されたということなんですよね。まさに現場の声や実態が、この強い相関を示すデータと符合しているわけですよ。だったら、そこがどうなのかということを厚労省自身が更に調査を進めなければならないと私は思うんですね。
大臣、もう一回。厚労省というところは、データを重視する省庁ですよね。だったら、今私が紹介した声と示されたデータを、やはり真剣に受け止めて、何が要因になっているのか、これは厚労省としてもう一回、私のデータを基にしてちょっと調べていただきたいですよ。どうですか。
○大串委員長 上野厚生労働大臣、簡潔にお願いします。
○上野国務大臣 車の関係は我々もしっかり受け止めたいと思いますが、先ほど申し上げましたのは、相関係数が高いからといって因果関係を説明し切れないということを申し上げたところであります。
その上で、委員は更に推論を進められまして、そこに水際作戦が発生しているのではないかということをおっしゃっているんですが、それが発生しているかどうかということを実証するためには、当該地方において、当該県において想定される出現率といいますか発現率、それよりも低いということを証明をしないと、なかなかそこまでは言えないのではないかと感じております。
いずれにいたしましても、データをお示しをいただきましたので、我々としてももう少し勉強はさせていただきたいと思います。
○辰巳委員 私は今日は水際作戦とは言っておりません。言っていないんですよ、今日はね。今日は言っていないんです。せやけど、車を持っていたら、これは駄目だという思いがあるので、そもそも申請に至らない、そういうケースがあるんじゃないか。
大臣から、受け止めてという答弁もありましたので、是非これは、調査するなりして進めていただきたい。原則、車の保有を認めるという方向に、地方では特に必要ですから、やっていただきたいと思います。
以上です。