違法な民泊を合法化 新法案審議入り 参院本会議

2017年6月2日  
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参院本会議で2日、住宅で宿泊サービスを提供する民泊を拡大する住宅宿泊事業法(民泊新法)案が審議入りしました。日本共産党の辰巳孝太郎議員が質問に立ち、同法案は深刻な問題を起こしている違法民泊を合法化するものだと告発しました。

辰巳氏は、旅館業法の許可を得ない違法民泊を政府が野放しにしてきたと批判。厚生労働省の2016年末実施の調査で、許可を得ていた物件が東京23区と政令市では1・9%にすぎなかったとして、「取り組むべきは違法物件の取り締まり徹底だ」と強調しました。塩崎恭久厚労相は答弁で、15年に無許可営業で指導を受けた施設が983件に上ったことを明らかにしました。

辰巳氏は、旅館業法上の宿泊施設には自治体の保健所や消防、警察、建築指導課の指導が入る一方、民泊はそうした規制を一切受けず、届け出だけで営業できると指摘。昨年のパリのテロ事件でも、犯人が匿名性の高い民泊を利用していたことを示しました。

辰巳氏は、既に民泊が営業されている地域では、ごみ出しの違反や夜間の騒音など深刻な問題が起きていると指摘。法案が事業者や管理業者の苦情対応を義務化していること自体、民泊事業が平穏な日常生活を脅かすことを証明していると訴えました。

石井啓一国土交通相は「近隣トラブルが社会問題になっていることは承知している」としながら、「(法案は)こうした課題に対処するものだ」と強弁しました。

2017年6月3日付「しんぶん赤旗」より引用


議事録を読む

○辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、住宅宿泊事業法案について質問をいたします。
 民泊サービスとは、住宅を活用して人を宿泊させる事業のことです。
 旅館業法の許可を得て宿泊業を営業している方もたくさんおられる一方、この間、旅館業法の許可を得ない違法民泊は広がり続け、その数は五万件に上ると言われています。本法案は、それら違法民泊を解禁、合法化するものであります。
 昨年末の厚生労働省の調査によると、対象とした一万五千件のうち、無許可は四千六百二十四件に上り、物件の特定ができないものは七千九百九十八件と、合わせて八三・五%に上り、東京二十三区と政令指定都市に限ると九八・一%に達しますが、ほとんどが放置された状態です。
 政府に伺います。
 この間、無許可で指導、検挙された件数は一体幾つになるのですか。今政府が取り組むべきは、これらの違法物件の取締りの徹底ではありませんか。結局、取り締まるべき違法民泊を放置し続けた挙げ句に、本法案の成立で、違法なものを合法化しようということではありませんか。
 民泊の最大の問題は、安全の確保です。
 宿泊料を受け人を宿泊させる営業は、全て旅館業法の規制を受けています。これら施設には、保健所を始め、消防や警察、建築指導課などが定期的に立ち入り、安全、衛生、治安の維持のための指導が行われています。ところが、本法案において、民泊とされる事業はそれらの規制を受けず、旅館業法における営業許可のために必要な建築確認検査済証や消防法適合通知書も必要ありません。
 大臣、旅館業法上の安全基準を果たさずに、届出だけで民泊事業を認めるのはなぜですか。許可制になぜしなかったのですか。
 民泊事業者に対する指導監督は保健所や都道府県の職員が担うことになります。合法化されれば爆発的に増えると見込まれるのが民泊です。今でも自治体の職場は職員が減らされ多忙を極めています。安全や衛生の確保のため、どれほどの職員の増員が必要になることを想定しているのですか。
 民泊には、ホテルや旅館に課せられているフロント設置や二十四時間常駐義務はありません。家主不在型の場合、民泊事業者の委託を受けた管理業者はどのように本人確認をするのですか。管理業者とも対面せずにチェックインすることも可能なのではありませんか。
 衆議院での参考人質疑で参考人は、昨年パリで起こったテロも匿名性の高い民泊を利用していたことを取り上げ、懸念を示しました。宿泊予定者以上の人数で宿泊することや、宿泊予定者以外の人が宿泊することが容易になることは、治安上の重大な問題が起こり得るという認識はありますか。
 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長の北原理事長は、一日であってもお客様の命と財産を預かってお泊めするのが宿泊サービス、だからこそ、消防法や建築基準法、衛生の規制は当然、コストは掛かるが万が一の事故が起きないように旅館業法を守ってきたと述べています。大臣はこの声にどう応えますか。
 ホテル、旅館は住宅専用地域には建てられませんが、本法案では民泊サービスの実施が可能となります。
 住居専用地域は、住居環境に悪影響を与えるおそれのある用途の建物を制限し、良好な住居環境を保護するために設けられています。民泊が行われている地域からは、ごみ出しルールが守られない、夜間の騒音がひどいなどと訴える人が後を絶たず、地域社会とコミュニティーに深刻なトラブルを招いています。
 本法案では、住宅宿泊事業者や管理業者が苦情等に対応することを義務付けていますが、そもそも、このような条文を法律で書き込まざるを得ないこと自体、民泊事業が平穏な日常生活を脅かすことを証明しているではありませんか。
 本法案では、住宅専用地域での民泊サービスを可能にするため、民泊を旅館やホテルとは異なる住宅として扱い得るよう、事業者が行えるサービスは年間提供日数上限を半年未満、百八十日以下とし、一泊二日での利用の場合では一宿泊日とカウントされます。しかし、日にちが重ならない場合百八十泊三百六十日となり、一年のほぼ全てを民泊事業として営むことが可能となります。これでは住宅として扱う合理性がないではありませんか。住宅ではないものを住宅専用地域に認めることは、用途地域指定を形骸化させるものではありませんか。
 世界の主要都市は、民泊から生じる様々なトラブルを回避するため、規制を強めています。民泊発祥の地、サンフランシスコは、年間日数制限を当初の九十日から六十日に制限、ロンドンは九十日、アムステルダムは六十日までとし、ニューヨークは三十日未満の短期貸し、ベルリンは短期賃貸を全面的に禁止しています。民泊の広がりにより賃貸物件が高騰し、地域住民が追い出されているとの報告もあります。各国の教訓に倣えば、本法案のような全面解禁の規制緩和を認めるわけには絶対にまいりません。
 現在、国家戦略特区によって、大阪府や東京都大田区などでは民泊が例外的に認められています。特区制度は、特区地域以外での事業実現も視野に入れるもので、事業の検証が不可欠です。厚生労働大臣、これらの地域で民泊を認めたことで、違法民泊の数は減少したのでしょうか。特区で実施してもうまくいかないものを、どうして全国に広げることができるんでしょうか。
 特区民泊認定に当たっては、事前に周辺住民に適切な説明を行うことが要件とされています。ところが、新法では、事前の説明は要件とされていません。周辺住民は、ある日突然、民泊の標識が出て初めて、近隣あるいは隣の部屋で民泊事業が行われていることを知ることになるのではありませんか。大臣、地域住民等のトラブル防止のためには、事前に自治会や周辺住民に説明を行い、同意を得ることを必要とするべきではありませんか。
 政府は、二〇二〇年に四千万人、二〇三〇年に六千万人という訪日観光客数の目標を定めています。しかし、今、京都の宿泊客は、二〇一五年、外国人が百三十万人増加する一方、日本人客は百十万人減少しました。京都観光総合調査によると、その一番の理由は、人が多く、ゆっくり見物できないでした。経済のためだと観光客の数だけを増やせばよいという政策の限界が来ているのです。長期的視点に立てば、観光資源の保護や文化財の保護のためにも、飽和状態にある都市部へのこれ以上の観光客誘致を節度あるものにする必要があるのではないでしょうか。
 観光立国推進基本法は、地域の住民が誇りと愛着を持つことのできる活力に満ちた地域社会の持続可能な発展を通じて国内外からの観光旅行を促進することが、将来にわたる豊かな国民生活の実現につながるとしています。地域に混乱と困惑をもたらす民泊を解禁、合法化しては、誇りと愛着を持つことはできません。
 住んでよし、訪れてよし、そこに暮らしている国民の生活が豊かになってこそ、観光地としての魅力も輝きます。これこそ日本の観光政策の目指すべき指針であるということを述べて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣石井啓一君登壇、拍手〕
○国務大臣(石井啓一君) 辰巳孝太郎議員から御質問をいただきました。
 まず、本法案は違法なものを合法化するのではないかとのお尋ねがありました。
 近年、住宅を活用して宿泊サービスを提供するいわゆる民泊が我が国でも急速に拡大をしております。この民泊につきまして、現状では、安全面、衛生面の確保がなされていないほか、騒音やごみ出しなどによる近隣トラブルが生じているなどの問題が発生をしているところであります。一方、訪日外国人旅行者が急増する中、多様化する宿泊ニーズに対応するため、この民泊の活用を図ることが求められております。これらの課題を踏まえ、民泊に関する一定のルールを定めて健全な民泊の普及を図るため、本法案を今国会に提出したものであります。
 住宅宿泊事業を届出制とすることについてお尋ねがありました。
 いわゆる民泊について、現状では、旅館業法の規制が必ずしも遵守されないまま実態が先行しており、本法案においては、まずは匿名性を排除するため、住宅宿泊事業を行おうとする者に対して届出をしなければならないとしたところであります。また、安全確保につきましては、住宅宿泊事業者に非常用照明器具の設置、避難経路の表示等の措置を義務付けるとともに、居室の床面積の基準を設けるなど、許可制の旅館業と同等の安全基準を設けているところであります。住宅宿泊事業については、届出制としつつも、必要な指導監督をしっかり行うことで安全性が確保されるよう、その適正な運用を図ってまいります。
 安全衛生の確保のための都道府県等の体制強化についてお尋ねがありました。
 本法案の施行に伴い、都道府県等の地方公共団体は、自治事務として、住宅宿泊事業の届出受理、公衆衛生の確保等に関する指導監督などの事務を行うこととなります。これらの事務は、都道府県等の関係部局が連携してその執行を担っていくことを想定をしております。
 こうした事務を実施するために必要となる体制については、各都道府県等によって異なるところでありますが、国土交通省といたしましては、都道府県等が十分な指導監督等を行えるよう、人員確保、体制の構築に対し、関係省庁と連携をしながら必要な措置を検討してまいります。
 住宅宿泊管理業者による宿泊者の本人確認についてお尋ねがありました。
 本法案におきましては、家主不在型の住宅宿泊事業では、住宅宿泊管理業者に対して宿泊者名簿の備付けを義務付けることとしております。このため、宿泊者に対し宿泊時に旅券の提示等を求めることにより本人確認をすることとしており、また、それを対面ないしはICT等を活用した対面と同等の手段で行うこととしております。これにより、本人確認が行われることをしっかりと担保してまいります。
 宿泊予定者以外の者が宿泊すること等による治安上の懸念についてお尋ねがありました。
 本法案においては、家主不在型の住宅宿泊事業では、住宅宿泊管理業者に対して宿泊者名簿の備付けを義務付けることとしております。このため、宿泊者に対し個別に宿泊時に旅券の提示等を求めることにより本人確認をすることとしており、また、それを対面ないしはICT等を活用した対面と同等の手段で行うこととしております。これらによりまして、宿泊予定者以上の人数で宿泊することや宿泊予定者以外の者が宿泊することの防止に努めてまいります。
 民泊の導入を懸念する宿泊業界の声についてお尋ねがありました。
 本法案については、宿泊業界や有識者などの幅広い関係者で構成する民泊サービスのあり方に関する検討会での議論を十分に踏まえた内容としております。
 具体的には、住宅宿泊事業者に対し、旅館業法同様、宿泊者の衛生の確保や宿泊者名簿の備付けなどの義務を課すとともに、防火、避難上の安全基準についても旅館、ホテルと同程度のものを求めることとしております。一方、旅館、ホテルについても、現在、厚生労働省において、施設要件等について一定の規制緩和を行う方向で検討が進められていると承知をしております。これらによりまして、旅館、ホテルとのイコールフッティングを図りつつ、宿泊者の安全性を確保した上で健全な民泊サービスの普及を進めてまいる所存であります。
 民泊事業による日常生活への影響についてお尋ねがありました。
 現状において、民泊サービスは無秩序に拡大をしておりまして、安全面、衛生面のほか、騒音やごみ出しなどにより近隣トラブルが社会問題になっていると承知をしております。こうした課題に対処し、適正な規制の下に健全な民泊サービスの普及を図ることを目的として本法案を提出したものであります。
 民泊を住宅として扱う合理性がないのではないかとのお尋ねがありました。
 本法案における住宅宿泊事業は、実際に宿泊サービスを提供している時間を日数に換算したものが一年間で百八十日を超えないものとすることとしており、通常の宿泊サービスを一回提供する機会を一日と捉えたものであります。この場合、既存の旅館、ホテル等は一年で三百六十五回通常の宿泊サービスを行うことが可能である一方、住宅宿泊事業ではこれが百八十回までと半分未満しかできないことということになります。このような制限の下で、住宅が多く立地する住宅専用地域を含め、住宅に人を宿泊させる事業を住宅宿泊事業として実施可能としております。こうしたことから、都市計画に基づく用途地域制度との整合性も確保されていると考えております。
 周辺地域の住民への説明と同意の必要性についてお尋ねがありました。
 住宅宿泊事業につきましては、旅館業や特区民泊では課されていない標識の掲示の義務を課すとともに、住宅宿泊事業者又は住宅宿泊管理業者に対し、宿泊者への周辺地域における生活環境の悪影響の防止についての説明義務や苦情処理の義務を課すことにより、周辺地域への悪影響を抑制する仕組みとなっているため、周辺地域の住民への事前説明や同意取得までを課す必要まではないと考えております。
 都市部への観光客誘致の抑制についてお尋ねがありました。
 昨年三月に政府全体で取りまとめました明日の日本を支える観光ビジョンにおいて設定されました訪日外国人旅行者数、二〇二〇年までに四千万人、二〇三〇年までに六千万人という目標は非常に意欲的な数字であり、都市部も含め全国において、観光ビジョンに盛り込まれた総合的な施策を国を挙げて着実に実施して達成すべきものであると考えております。
 その上で、その目標を達成するためには、訪日外国人旅行者の増加の効果を地域に波及させ、いわゆるゴールデンルートに集中している訪日外国人旅行者を全国各地へ呼び込んでいくことが重要であります。このため、国土交通省では、広域観光周遊ルート形成促進事業を始めといたしまして、観光資源の磨き上げ、受入れ環境の整備及び海外へのプロモーションなどの取組によりまして、地方への誘客を促進をしてまいります。(拍手)
   〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕
○国務大臣(塩崎恭久君) 辰巳孝太郎議員にお答えを申し上げます。
 無許可営業に対する指導件数等、違法民泊についてのお尋ねがございました。
 旅館業の許可を受けていない無許可営業については、毎年都道府県等に対し調査を行っており、直近の状況としては、平成二十七年度調査において無許可営業とされた一千四百十三件のうち、何らかの指導を実施し又は指導を継続中であるものが九百八十三件となっております。また、警察では、旅館業法の無許可営業違反について、直近では平成二十八年に五事件が検挙されているものと承知をしております。
 なお、厚生労働省においては、現行法の遵守や悪質な民泊を対象とした取締りの強化等について、これまでも自治体等に対して要請を行ってきており、違法民泊を放置し続けたとの御指摘は当たらないところでございます。
 特区民泊の認定に伴う違法民泊の状況についてのお尋ねがございました。
 御指摘の特区民泊については、いずれの地域も事業開始は平成二十八年以降でありますが、平成二十八年度における旅館業の許可を受けていない営業者の件数については、現在都道府県等に対する調査を取りまとめ中であり、特区民泊による無許可営業の増減についてお答えをすることは困難であります。
 また、特区民泊については、三月二十七日時点で八十五施設で実施をされ、七百八十七人が滞在をしており、一定の成果を上げているものと認識をしております。
 なお、本法案は、住宅宿泊事業者の届出制や仲介事業者の登録制を始めとする民泊サービスに関する一定のルールを定め、その実態把握と適切な指導監督を行い得るよう措置するものであり、特区民泊をそのまま全国展開するものではないと認識をしております。(拍手)